本日、今年のブッカー賞が発表され、Bernardine Evaristo の "Girl, Woman, Other" と、Margaret Atwood の "The Testaments" の2作が栄冠に輝いた。Atwood は2000年の "The Blind Assassin"(☆☆☆☆)以来2度目の受賞。2作品が同時に受賞したのは1992年以来、2回目である。当時の受賞作は、Barry Unsworth の "Sacred Hunger" (☆☆☆☆★)と、Michael Ondaatje の "The English Patient"(☆☆☆☆)。
(この記事は、職場でこっそり書いたため、綴りミスをはじめ、間違いが非常に多かった。帰宅してチェックしたところ、上の「2回目」というのも誤りで、実際は3回目。1974年に Nadine Gordimer の "The Conservationist"(☆☆☆★★)と、Stanley Middleton の "Holiday"(未読)が受賞したのが最初でした)。
さて、"Girl, Woman, Other" のほうは既報どおり、ショートリストが発表されて以来、現地ファンのあいだではずっと1番人気。ぼくの評価も☆☆☆★★★で、じつは内心、これが受賞するだろうと思っていた。いわゆるLGBT問題を扱ったトピカルな作品だったし、しかもその扱い方がバランスのとれた万人向きのものだったからである。
点数的には Salman Rushdie の "Quichotte" のほうが高いと思ったが(☆☆☆☆)、同書はもっともっと深い内容を扱ってしかるべきだったのに、壮大な傑作になりそこねている点が気になった。
一方、"The Testaments" が受賞したのはまったく意外(☆☆☆★★)。ディストピア小説の長い歴史のなかで、「旧作『侍女の物語』はマイルストーン的な秀作であったが」、この続編のほうは「新たな一ページを刻むほどの出来ではない」と判断していたからだ。
昨日読み終えたばかりの Chigozie Obioma の "An Orchestra of Minorities" については、"Girl, Woman, Other" と同点ながら(☆☆☆★★★)、同書より若干落ちる。「カタルシスを得られないのが最大の難点だろう」。
Elif Shafak の "10 Minutes, 38 Seconds in This Strange World" は「読み物としては面白いという程度」(☆☆☆★)。それより、著者には申し訳ないが、落選してよかったなと思ったのは、Lucy Ellmann の "Ducks, Newburyport"(未読)。なにしろ千ページ近い大作で、しかも全巻改行なしに小さな活字がぎっしり詰まっている。読む前からめげてしまいそうだ。今後もフォローするかどうかは未定。
最後に、ぼくのランキング順に、受賞作をふくむ最終候補作を紹介しておこう。
1.Quichotte(Salman Rushdie)
2.Girl, Woman, Other(Bernardine Evaristo)
3.An Orchestra of Minorities(Chigozie Obioma)
4.The Testaments(Margaret Atwood)
5.10 Minutes, 38 Seconds in This Strange World(Elif Shafak)
(未読につき番外)