予約注文していた Margaret Atwood の "The Testaments" がまだ手元に届かない。かの "The Handmaid's Tale"(1985 ☆☆☆☆)の続編とあって、話題性という点では今年のブッカー賞候補作のなかで断トツと思われるのだけど、発売日は今月10日。それなのに英米アマゾンでベストセラーということは、それだけ発売と同時に買って読んだ人が多いのかな。
ともあれ、Sulman Rushdie の "Quichotte"(☆☆☆☆)を読んでいるうちに、ほかの最終候補作はさみだれ式に到着。見ると、どれも長い。もっか現地ファンのあいだで2番人気、Lucy Ellman の "Ducks, Newburyport" にいたっては、なんと千ページ近い。読む前からメゲてしまいますな。
それで思い出したのが、2013年の受賞作 Eleanor Catton の "The Luminaries"(未読)。ほかの最終候補作は発表前にぜんぶ読んでいたのに、同書の分厚さに恐れをなし、この1冊だけ読み残していたら、イヤな予感が当たり栄冠をさらってしまった。こんどもその二の舞になるのかしらん。
それはさておき、今年の賞レースで1番人気はいまのところ、Bernardine Evaristo の "Girl, Woman, Other"。これも長い。3番人気の "Quichotte" を読みおえたあと、たぶん "The Testaments" が届くまでに片づきそうもない、とあきらめた。
そこで仕方なく手に取ったのが、"Quichotte" に乗り換えるまで読んでいた Patrick Modiano の "Sundays in August"(1986)。"The Testaments" までのツナギに、と思ったのだけど当て外れ。こちらは短すぎた。うまく行かないものですな。
Sundays in August (The Margellos World Republic of Letters) (English Edition)
- 作者: Patrick Modiano
- 出版社/メーカー: Yale University Press
- 発売日: 2017/08/01
- メディア: Kindle版
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[☆☆☆★] 点数は低いが、凡作というほどではない。モディアノ作品に特有の、後ろ髪を引かれるような過去へのこだわり度が足りないだけ。ファンにはじゅうぶん楽しめる水準である。ニースでパートの仕事をしている中年男が、七年前パリで知りあった男フレデリックと再会。フレデリックは妻と別れたようすだが、じつはその女シルヴィアは妻ではなかったという。やがて中年男は、パリからニースへシルヴィアと駆け落ちした当時を回想。彼女と別れるまでのいきさつがサスペンスに満ちたクライム・ストーリーで、かなり読ませる。いろいろな謎が霧のなかから浮かびあがり、少しずつ解けていく。彼はなぜニースにのこったのか。縁もゆかりもない土地に根無し草のように住み、偶然のできごとがきっかけで、人生がつかのま光り輝いた日々を思い出す。それは多くの現代人がおかれている状況と同じかもしれない。フレデリックが一連の事件に関与したのかどうかなど、いくつか読者の想像にまかせているところも、よろずあいまいな現代にふさわしい設定である。フィルム・ノワールともいえる『八月の日曜日』。いい題名だ。