ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Balkan Trilogy" 雑感

 コロナの時代の読書はどうあるべきか。
 なに言ってるんだい。こんな時代だからといって、べつに新しい読みかたがあるわけじゃない。ただ読みたいものを読めばいいのさ。
 たしかにそのとおり。時節柄、充実した自粛生活を送るべく、小説ファンなら未読の名作、話題の新作をひたすら読みまくる。それだけの話だ。
 が、前期高齢者のぼくとしては、それだけの話、とあっさり済ませるわけにも行かない。いままでどおり思いつくままに積ん読の山を切り崩し、たまたま目についた新刊を買い求めるのではなく、コロナにかからないうちに、まだお迎えが来ないうちに、読むべき本から先に読まなくては。そこで上の疑問になるわけだ。そしてその、読むべき、という点で判断に迷ってしまう。
 などと考えながら、今年の新年の抱負に立ちかえり、とりあえず大作に取り組むことにした。さいわい、900ページ近い Hilary Mantel の "The Mirror & the Light"(2020 ☆☆☆★★)を読みおえたばかり。長さへの免疫が出来つつある。
 実際、いま読んでいる Olivia Manning の "The Balkan Trilogy" など、なんだ、まだ700ページを過ぎたところか、という感じ。こんな感覚は初めてだ。
 といっても、これには少々トリックがあり、この本は3部作の合冊本なので、300ページ台の小説を3冊連続して読むのに等しい。それならいつものことだし、しかも同じ作家の同じテーマの作品とあって、巻を追うごとにどんどん読みやすくなる。
 その Manning のことはまったく知らなかった。そもそも、いつ、どんなきっかけで買った本なのかもまったく記憶にない。なにか話題作の関連本をネットサーフィンで検索しているうちに見つけたのでは、という気がする。
 そこでいま『新潮世界文学辞典』を調べてみると、ごく簡単な記述があった。「イギリスの女流作家。長い外国生活の体験を生かして、異国を舞台とする小説を発表している」。"The Balkan Trilogy" は「戦時中(第二次大戦中)のルーマニアからギリシアクレタ島を描いている」。なるほど、簡にして要を得た説明で、これ以上くだくだしく駄文を綴るまでもない。
 と思いつつ蛇足をいくつか。まずこの合冊本が初めて刊行されたのは1987年。上の辞典の記述と合わせると、第1巻 "The Great Fortune" は1960年刊、第2巻 "The Spoilt City" は1962年刊、第3巻 "Friends and Heroes" は1965年刊ということになる。
 読みはじめたときは文芸エンタメかと思ったが、すぐにそうではないと気づいた。が、なぜ簡単な紹介どまりの作家なのか、なんとなくわかるような気もする。ぼくの評価は第1巻が☆☆☆★★。第2巻も後半、★をひとつ減らすべきだろうがオマケ。いま読んでいる第3巻もオマケで同点だが、この先の展開次第では掛け値なしになるかもしれない。
 その判断材料についてもふれようと思ったが、もう夕飯どきになってしまった。
(写真は永平寺。2月に撮影)

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