ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

D. H. Lawrence の “The Rainbow”

 ロレンスは学生時代の夏、"Lady Chatterley's Lover" を読んで以来、なんとなく夏読書向きのイメージがある。8年前に突然、海外文学に狂いはじめてから、夏になると英文学の古典としては、最初は E. M. フォースターやジョイスコンラッド http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20071125/p1 などを読んでいたが、やがてロレンスに回帰。"Women in Love" と "Sons and Lovers" を読破した。昨日レビューを書いた "Aaron's Rod" もそのノリだ。
 が、同書の前にロレンスに取り組んだのは2年前の冬で、以下はそのときのレビュー。

Modern Classics Rainbow (Penguin Modern Classics)

Modern Classics Rainbow (Penguin Modern Classics)

  • 作者:Lawrence, D H
  • 発売日: 2000/10/03
  • メディア: ペーパーバック
[☆☆☆☆★] 21世紀の日本で20世紀は英国のロレンスを読むと、彼我の差を痛感せずにはいられない。早い話が、本書は出版当時、「猥褻本」として発禁処分になったことで有名だが、いくらその理由とおぼしき描写を探しながら読んでもピンとこない。それどころか、こと恋愛にかぎらず、人間の魂と魂が激突する際に生じる、火花を散らすような白熱した詩的表現に、ただただ圧倒されるばかり。この凄まじい迫力は当然ながら、曖昧な和合を是とする、弛緩した我々の文化とは縁もゆかりもないものだ。そこには恐らく、人間を決定的に分裂した存在と見なす深い絶望と、その絶望と等量の、いやそれ以上に激しい愛の希求、つまり猛烈な理想主義があるのではないか。その意味で、『虹』とは言い得て妙のタイトルである。ロレンスにしては読みやすい英語で、内容ともども最適のロレンス入門書である。

 …"Aaron's Rod" についてもう少し詳しく書こうと思ったのに、最初から脱線してしまった。続きはまた後日にしよう。