ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Karen White の "The House on Tradd Street"(2)

 血液検査の結果はさいわい異常なし。ホッとしたところで、先週寝こんでいるあいだに届いた今年のブッカー賞受賞作、Hilary Mantel の "Wolf Hall" に取りかかった。さっそく最初の雑感を書いてもいいのだが、今日は昨日の補足をしておきたい。
 といっても本の内容ではなく、未知の洋書発見の楽しさについて。"Wolf Hall" もそうだが、あちらの主な文学賞の受賞作や候補作、ニューヨーク・タイムズ英米アマゾンなど各種メディア選出の優秀作、ベストセラーを追いかけていると、だいたい当たり。たまに外れもあるが、ケッ、こんな本が売れるのかよ、と内心ほくそ笑むこともできる。しかしときどき、本当にそんな楽しみ方でいいのかな、と思うことがある。じつは、もっともっと外れに出くわしてもいいんじゃないか。
 その昔、神田の神保町に東京泰文社というペイパーバック専門の古本屋があり、眼鏡をかけた店主の視線を気にしながら、2,30冊ずつほど積まれたペイパーバックの山を右から左にどんどん崩していったものだ。故植草甚一のまねである。なぜ店主の目が気になったかというと、万引きしようという下心があったからではなく、どうもあの親爺さん、どこに掘り出し物があるか知っているような気がしたからだ。ほらほら、その本を買わないなんて、あんたモグリのお客だね。(これは考えすぎで、店主はただ万引き防止のために目を光らせていただけ、というのが真相だろう)。
 そうやって見つけた本に…と自慢したいところだが、当時も目利きでなかったぼくはあまり戦果が得られなかった。だからこそ、ネットで瞬時に良書の情報をキャッチできる現代の恩恵に浴しているわけだが、ひるがえって、作者もタイトルも聞いたことのない本を通ぶって買い求め、何だこりゃ、とあとでガックリしていた時代のほうがずっと楽しかったように思う。
 さりとて、予算が限られている以上、闇雲に買いあさるわけにも行かない。いきおい「あちらの主な文学賞の受賞作や候補作…を追いかけ」ることになるわけだが、たまには外れ覚悟で冒険してみようじゃないか、と思って入手したのがこの "The House on Tradd Street" である。雑感にも書いたとおり、米アマゾンのリストマニアか、何やら検索した作品の関連本リストの中で見つけた本のような気がする。
 え、これもう翻訳が出てるよ、こんな作品を知らないなんて、あんたモグリの洋書オタクだね、という声が聞こえてきそうだが、唯我独尊、夜郎自大、井蛙之見、すでに紹介済みの本かどうか、あえてネットを検索しないことにした。ぼくとしては、自分の勘を頼りに読んだ作品が大当たりだったことだけで充分だ。自己満足のブログたるゆえんである。
 「たまには外れ覚悟で冒険」と書いたが、じつは上の方式で買った本が山積している。そのうち何冊当たりがあるか知れたものではないが、「もっともっと外れに出くわしてもいいんじゃないか」と腹をくくっている。