ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Super Sad True Love Story”雑感(1)

 Gary Shteyngart の "Super Sad True Love Story" に取りかかった。以前、"Absurdistan" (06) があちらのベストセラーになっているのを知り、結局注文をためらってしまった作家だが、今回は Michiko Kakutani が去年の年間最優秀作品の一つに選んでいる。それなら間違いないだろうと食指が動いた次第だ。
 ようやく風邪が治ったばかりなので今日はいくらも進まなかったが、さすが一流批評家のお目は高いですね。タイトルから連想されるようにラブコメの要素もあるが、どうも単なるラブコメではなさそうだ。
 しかも、これは一種のSFとも言えそうで、舞台はどうやら近未来のアメリカではないかと思われる。経済が疲弊してドルの価値が下落、今やなんと1元4.90ドル。圧倒的に中国が優勢で、韓国もアメリカ以上に豊かな国となっている。なんだか現実味を帯びた話で、ひょっとしたら30年後ぐらい、ほんとうにそうなっているかもしれない。
 政治的には Bipartisan という一つの政党だけ存在し、これが American Restoration Authority なる組織の後ろ盾となり、この ARA が National Guard を動かし、ニューヨーク市内や空港にも戦車を配備、検問所を設けるなど国民生活を監視している。
 その監視道具の一つに使われるのが apparat (3つの a にはいずれもウムラウトあり)。これは携帯用ノート型パソコンというか iPad の超ハイテク版みたいなもので、とにかく一般的な情報のみならず、たまたま居合わせた周囲の人物でも、すかさずその資産状況や心理状態など個人情報をすべて取得できる。この apparat を誰もがみんな携帯しているのだから、もはやプライバシーなど皆無に等しい。それゆえ、友人同士の集まりでも面と向かって話しあう一方、apparat なしではコミュニケーションが成り立たないほどだ。これまた、現在のネット文化の行く末を暗示しているようで空恐ろしい。
 そんな中、ある中年男が若い娘に恋をする…という物語のようだが、今日は背景説明だけで疲れてしまった。この続きはまた後日。