昨日から古都旅行。旅先の奈良のホテルでこれを書いている。ケータイ利用なので非常に書きにくい。
こちらはずっと天気もよく、連日のどかそのもの。大変な事態になってしまった首都圏とは大違いだが、奈良市内で買ったのは、かみさんのリクエストで電池と懐中電灯、餅にサバ缶、クラッカーなど。そんなこんなで本書はろくに進んでいない。そこで今日は、今まで読んだぶんについて、べつの角度からふりかえってみよう。
すでに述べたとおり、今のところ本書には表題作だけでなく、ほぼ一貫して empty family のテーマが流れている。自分の幼いころから冷淡だった母親や、他界した両親、今は亡き昔の恋人、大昔の不倫相手などの思い出にふける主人公たち。いずれもたしかに empty な思いに駆られている。
だが一方、彼ら彼女たちが今でもそれほど過去に執着しているのは、それだけ過去との深いつながりを強く意識している証左でもある。かつて愛した、愛情を覚えた相手のことは、その思いが真剣であればあるほど忘れられない。当たり前の話だが、要するに empty な感情は熱い情熱の裏返しなのである。
この非常時、首都圏から遠く離れた古都を旅していると、現地で不自由を強いられている家族や友人のことが気になってならない。そんな状況で読んでいる本書は、時が時だけになおさら心にしみる作品である。