ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Cat's Table” 雑感 (2)

 昨日は結局、こちらの続きを読むことにした。短編集ならいつでも気軽に戻れるが、長編はいったん離れると、元の流れを思い出すのに時間がかかり、印象がぼやけてしまう恐れがある。それに、ギラー賞の発表が目前に迫っている。ぼくにしては珍しくハードカバーを買ったことだし、何とか発表前に読みおえなくては…。
 ハードカバーを買ったのは、もちろんこれが Michael Ondaatje の作品だからである。アマゾン・カナダでの評判から察するに、ひょっとしたら栄冠に輝くかも、とスケベ根性を発揮したわけだが、今まで読んだ範囲で判断するかぎり、これは「昔の名前で出ています」というやつですな。かなり退屈で、受賞の可能性はまあ低いと思う。
 ただし、ちょうど半分あたりで、お、これはイケル、と夢中になった。主人公の少年が旧セイロンからロンドンへ向かったときの航海記が続くうち、急に話が先へ飛び、船内で仲よくなった2人の少年にかんする後日談となる。
 このくだりは相当にいい。それまでわりと淡泊だった文体も明らかに変化し、タペストリーのように緻密な描写で、少年時代の一時期、親しくなった友人たちへの思いが、さらには、そのうち1人の妹への思いがノスタルジックに綴られる。もっと早くから、こんなエピソードを盛りこんでほしかったなあ。
 当然、ここから快調になるんだろうな、と期待したのだが、その後また、けっこう退屈な航海記が始まり、ガックリ。航海の実況中継ではなく、後日談もまじえた要するに回想録なのだから、現在と過去をもっともっと交錯させるといいのに…。話がなぜ退屈なのかはレビューでまとめるつもりです。