ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Red April” 雑感 (1)

 昨年のインディペンデント紙外国小説最優秀作品賞(Independent Foreign Fiction Prize)の受賞作、Santiago Roncagliolo の "Red April" に取りかかった。先週末はほかの本を読んでいたのだが、昨日の午後に届いた本書をパラパラやると、なんとなく惹かれるものがあり、急遽乗り換えることにした。
 この賞は英語以外の言語から英語に翻訳され、イギリスで出版された作品を対象とするものだが、過去の受賞作リストを見ると、91年の "Immortality" と06年の "Out Stealing Horses" 以外、恥ずかしながらすべて未読。そもそも "Out Stealing Horses" を読むまで、こんな賞があることさえ知らなかった。以後の受賞作はどれも入手しているのだが、実際に取りかかるのは今回が初めてだ。これからボチボチ catch up しなくては。
 Santiago Roncagliolo はむろん知らない作家だったが、紹介記事によると、1975年にペルーで生まれ、今はスペイン在住。第3作目の本書が英語圏デビュー作とのことで、原書はスペイン語である。ラテンアメリカ文学を読むのも久しぶりで、たぶん Roberto Bolano の "2666" 以来だろう。ラテアメ文学といえば、なんと言ってもマジック・リアリズムの小説が主流のはずで、この "Red April" もそうなのかな、と思ったが…
 今のところ、これはポリティカル・スリラーでしょうか。2000年、あのフジモリ大統領三選の年、ペルー南部の都市アヤクーチョでカーニバルの直後、焼死体が発見され、地方副検事 Chacaltana が捜査に乗りだす。検死の結果は明らかに他殺なのだが、肝心の警察がなぜか動こうとしない。法手続きの遵守を信条とする、正直でまじめな副検事はやきもき。が一方、彼なりに功名心もあり、市の実権を握っている軍司令官に形式的な事件報告書を提出して賞賛される。
 すぐそこに迫った選挙が事件と関係していそうな気もするが、まだよくわからない。死体発見者の行方を追っていた副検事が突然、何者かに襲われて暴行を受けるなど、定番ながら小さな山場もある。さてどうなりますか。