ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Vanessa Diffenbaugh の “The Language of Flowers” (2)

 先週の木曜に読みおえた Santiago Roncagliolo の "Red April" が予想外に重かったので、軽めのもので口直しをしたくなった。そんなときは文芸エンタメ路線にかぎる。そこで手に取ったのが、この "The Language of Flowers" というわけである。去年の暮れ、アマゾンUKの年間ベスト小説のリストを見た瞬間、タイトルとカバー絵から判断して文芸エンタメ路線だろうと思い、内容紹介も読まずに入手したものだが(その後ずっと積ん読)、今回の「見てくれ買い」は大当たりでした。(ぼくが読んだのはデカサイズのペイパーバックだが、さいわい廉価版がもうすぐ出るようだ)。
 評価としては、☆☆☆★★でもいいかなと迷ったが、★を1つおまけしたのは、終幕になって目がウルウルになってしまったからだ。ちょうどそこへ、夕食の買い物に出かけるかみさんが「晩は何にする?」と声をかけてきたので、あわててそっぽを向いて生返事。ぼくにもドラ娘がいるだけに、やっぱり親娘の情愛がからんだ小説には弱い。「涙もろい人は電車の中で読むのは禁物」というのは、偽らざる感想です。
 ずいぶんいい加減な評価だね、と思う人もいることだろう。たとえば、去年のブッカー賞最終候補作で、ギラー賞の受賞作でもある Esi Edugyan の "Half Blood Blues" は☆☆☆★★だったのに、こちらの文芸エンタメのほうが点数が高いとは! と純文学ファンには叱られそうだ。
 ぼく自身、いい加減だな、とは思うのだが、エンタメはエンタメとしてどれだけウェルメイドに仕上がっているか、芸術作品は芸術作品としてどれだけ…というのがぼくの立場である。いくら深刻な問題を扱っていても、ただ扱っているだけでは得点材料にはならない。
 ともあれ本書は、涙腺が弱くない人には「通勤快読」間違いなしです。