ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Vanessa Diffenbaugh の “The Language of Flowers” (1)

 Vanessa Diffenbaugh の "The Language of Flowers" を読了。アマゾンUK が選んだ去年のベスト小説のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★★] 泣けた。途中からおおよその展開と結末が読めるのに、いざその山場になると、やはり泣けてきた。花の命はみじかくて……と日本ではいうが、これは折にふれて花を引きあいに出しながら、数々の苦難を乗りこえ、たくましく生きる愛を描いた感動の物語である。舞台はサンフランシスコ。孤児院を出たばかりの若い娘ヴィクトリアが花言葉など、持ち前の花の知識を買われて花屋で働くうち花卸商の青年と恋仲に。ところが妊娠がわかるとなぜか離別。一方、これと平行して、短気で反抗的だった幼い少女時代の話も進む。いじめや虐待にあいながら多くの養父母のもとを転々としたあと、ようやく愛情豊かな女性エリザベスに出会えたと思ったら……。なぜヴィクトリアは青年と別れたのか。なぜエリザベスに引きとられなかったのか。ふたつの謎は当然結びつき、それが明かされとき、最後はおそらく……とほぼ読める。だが、ヴィクトリア・ファンの花屋の客が増えたり、頑固な少女がエリザベスにしだいに心をひらいたり、序盤ですでにグッとくる場面があり、やがてフィナーレで高らかに謳われる親子・家族・夫婦の愛。通勤快読本だが、涙腺の弱いひとは電車内に持ち込まないほうがいいでしょう。