ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“What We Talk about When We Talk about Anne Frank” 雑感

 今日はまず昨日の続きで、ブッカー賞の話題から。William Hill が恒例のオッズを発表した。1番人気は予想どおり Hilary Mantel の "Bring Up The Bodies" (3/1)。"Wolf Hall" の続編という話題性を考慮したのだろうが、何度も言うようにぼくはそれほどいい出来とは思わない。2番人気は Will Self の "Umbrella" (5/1)。あちらのファンによると、気合いをいれて読むべき作品らしい。
 以下の順番は次のとおり。Rachel Joyce "The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry" (6/1), Nicola Barker "The Yips" (8/1), Deborah Levy "Swimming Home" (10/1), Michael Frayn "Skios" (10/1), Alison Moore "The Lighthouse" (12/1), Tan Twan Eng "The Garden of Evening Mists" (12/1), Andre Brink "Philida" (14/1), Jeet Thayil "Narcopolis" (16/1), Ned Beauman "The Teleportation Accident" (20/1), Sam Thompson "Communion Town" (20/1)
 ぼくも何冊か注文し、"Narcopolis" は早々と今日届いたが、今年の夏は去年とちがって、ブッカー賞の候補作以外にぜひ読みたい作品がいくつかある。その1冊というわけではないが、今ボチボチ読んでいるのは、今年のフランク・オコナー国際短編賞の受賞作、Nathan Englander の "What We Talk about When We Talk about Anne Frank" だ。
 ぼくがこの賞の追っかけを始めたのは去年からで、最近の受賞作を3冊読んでみたが、以前、賞のことなど気にしないで読んだ Jhumpa Lahiri の "Unaccustomed Earth" にまさる作品はなかった。むしろ、去年候補作に選ばれる前に読んだ Alexander MacLeod の "Light Lifting" のほうが強く印象にのこっている。
 さて、今年の "What We Talk about ...." だが、今のところ、やはり Lahiri ほどではないにしてもかなりいい。タイトルどおり、各話ともユダヤ人の世界が描かれている。第1話が表題作で、フロリダに住むユダヤ人夫婦のもとを、エルサレムに移住した友人夫妻が久しぶりに訪ねてくる。コミカルで軽いタッチだが、やがて、もし万一ホローコストがふたたび起きたとしたら、自分は他人を救うために犠牲を払うことができるか、というシリアスな話題になる。最後、ある真実が明らかになったときの凍りつくような一瞬が印象的だ。