ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Bernardo Atxaga の “Seven Houses in France” (1)

 Bernardo Atxaga の "Seven Houses in France" を読了。パブリシャーズ・ウィークリー誌が選んだ去年の最優秀作品のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★] 本書には3つの謎がある。まず主人公の正体。ベルギーの植民地時代のコンゴに駐屯している守備隊に青年将校が赴任する。彼は射撃の名手だが、ほかの将校たちと打ち解けず、女にも手をふれない。謎めいた存在の彼に射撃大会で敗れた老中尉が敵愾心を燃やすが、その対立にはどんな意味があるのか。最後の謎はタイトルの意味。パリにいる隊長の妻がフランスで7軒目の家を欲しがっているが、それと上の物語との関係は? 主要人物に交代で視点が移り、それぞれの心中に渦巻く葛藤や煩悶が時にコミカルで読みどころ。ユーモラスな会話が楽しく、アクション場面でサスペンスが高まるうちに、純情と欲望、無垢と経験、善と悪のドラマが出現し、3つの謎が解ける構成の妙も光る。スペイン語からの英訳だが、ごく標準的な英語で読みやすい。