Bernardo Atxaga の "Seven Houses in France" を読了。パブリシャーズ・ウィークリー誌が選んだ去年の最優秀作品のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★] 本書には三つの謎がある。まず主人公の正体。20世紀初頭、ベルギーの植民地時代のコンゴに駐屯している守備隊に青年将校クリソストムが赴任する。彼は射撃の名手だが、ほかの将校たちと打ち解けず、女にも手をふれない。謎めいた存在のクリソストムに射撃大会で敗れた老中尉は彼をゲイ呼ばわりし、敵愾心を燃やす。その対立にはどんな意味があるのか。最後の謎はタイトルの意味。守備隊長ブライアンの妻でパリ在住のクリスティーヌが七軒目の家を欲しがっている。それと上の物語との関係は? 主要人物に交代で視点が移り、それぞれの心中に渦まく葛藤や煩悶がときにコミカルで読みどころ。ユーモラスな会話が楽しく、アクション場面でサスペンスが高まるうちに、純情と欲望、無垢と経験、善と悪のドラマが出現し、三つの謎が解ける巧妙な展開となっている。解けてみると大山鳴動ネズミ一匹の感がなきにしもあらずだが、通勤快読本にはちがいない。