いささか旧聞に属するが、帰省中にコスタ賞部門賞の発表があり、最優秀長編賞は Hilary Mantel の "Bring up the Bodies" が受賞。ブッカー賞とのダブル受賞は、コスタ賞がまだウィットブレッド賞だった当時、2003年の "Vernon God Little" 以来ではないか。(ただし、同書は同賞の最優秀新人賞)。
ぼくに言わせれば、"Bring up the Bodies" は "Wolf Hall" の二番煎じで、そんなにいいとは思わなかったけれど、文学にはいろいろな見方があるとも思うので、ぼくには見えなかった美点もきっとあることだろう。なお、今年のコスタ賞最優秀新人賞は、Francesca Segal の "The Innocents" だった。
- 作者: Francesca Segal
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2013/01/10
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「3つの謎」のうち、いちばん最後に解けたのはタイトルの意味である。舞台はベルギー領コンゴなのに、それがフランスとどう結びつくのか。べつにたいした謎でもないが、わかってみると、ははあ、なるほどね、と納得。
射撃の名人である青年将校と、彼に恨みをいだく老中尉との確執が最大の山で、2人もふくめた各人物の「心中に渦巻く葛藤や煩悶が時にコミカルで読みどころ」。それを楽しんでいるうちに、2人の対立の意味もわかる(と錯覚できる)。ぼくはそれを「善と悪のドラマ」と要約したが、図式的なパターンではないところが大いによろしい。
それにしても、今回の帰省は、本書のほかに Andre Maurois の "Climates" も読めて充実した毎日だった。通勤快読本、バカにはできませんな。