ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Truth Like the Sun” 雑感

 Jim Lynch の "Truth Like the Sun" をボチボチ読んでいる。これは昨年、ニューヨーク・タイムズ紙の書評家、Janet Maslin が10 favorite books に選んでいたものだ。
 Jim Lynch は、ぼくにとってはなつかしい作家だ。Maslin のリストを見て瞬間的に思い出したのが、旧作の "The Highest Tide" (2005) である。読書記録を調べると読んだのは2007年だが、ぼくにしては珍しく内容をけっこう憶えている。たまたま先週読みおえた Barbara Kingsolver の "Flight Behavior" とおなじくエコロジーを扱った作品だ。同書よりずっとオススメです。
 というわけで、かなり期待してこの新作に取りかかったのだが、もっか超多忙中につき、なかなか先へ進まない。いや、ほんとうは、ほかにもイマイチ乗れない理由があるのだが、それはもう少し流れを見きわめてから披露することにしたい。
 そこできょうは、"The Highest Tide" の昔のレビューでお茶を濁しておこう。点数はきょうつけました。たしか映画化の話もあったはずだけど、実際はどうなったのかな。

The Highest Tide

The Highest Tide

[☆☆☆★★★] 少年少女の成長には夏休みが必要だ、ということを改めて思い知らせてくれる青春小説の佳作。自由な時間が与えられ、好きなことに熱中。悪ガキ仲間と遊びまわり、ほのかな恋心を燃やし、大人の世界にちょっとふれ、人生の真実をかいま見る。そんな本書のエピソードを読んでいると、大なり小なり似たような経験を思い出し、心はつい、あの夏の日に戻ってしまう。よくあるパターンだが、定型を感じさせない設定の妙が光る。主人公はレイチェル・カーソンに夢中の不眠症に悩む少年だ。この少年が夏休み、月夜の浜辺でダイオウイカをはじめ、不思議な海の生物を次々に発見する。それがときにファンタジーといってもいいほど詩的幻想的な高まりを見せる一方、エコロジーや環境問題という現実を下敷きにしているのがうまい。そこへ前述のとおり、親の不仲にショックを受けたり、異性の話で盛りあがったりと思春期ならではの逸話が混じり、とにかく変化に富んだ展開である。環境の異変を告げるお祭り騒ぎはいささか作りすぎの感もあるが、少年がちょっぴり身長を伸ばし、大人に近づいたことを素直に歓迎したい。英語は馴染みの薄い生物名などを除けば、標準的なものだと思う。