ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Paul Murray の “The Bee Sting”(2)

 長かったぁ。これ正直いって、本書を読みおえた直後のいちばんの感想です。早く終わらんかい、とキレるほどではなかったけど、途中からもう、長ぁい。
 けれど、同じく超大作で、やはり青春小説かつホームドラマでもあった Barbara Kingsolver の "Demon Copperhead"(2022 ☆☆☆★★)よりおもしろかった。

 あちらは『デイヴィッド・コパフィールド』の本歌取りで、ゲージュツ性という点では一枚上だと思うが、それならそれで、もっと突っこんでほしい問題もあった。主人公デーモン少年の「『悪意や利己心』の体験が、人間の心中にひそむ悪の洞察へといたらない点に不満がのこる」。
 それにひきかえ、表題作のほうは「文芸エンタテインメント巨篇」。100パーセント娯楽に徹しているわけではないが、「花嫁が結婚式場の教会へむかう途中、蜂に目を刺されてサァたいへん」という「蜂のひと刺し」事件をはじめ、随所にコミカルな場面があって、笑える。
 もっとも、「この事件、じつは裏話があり、新郎新婦にとって人生の一大転機であったことが終盤で判明」。ほんとはネタを割りたくなかったのだが、全篇スラップス・コメディではないということを証明する必要があり、差しさわりのない程度にバラしてしまった(つもりです)。
 その花嫁イメルダは美人ママで、あるパーティに出かける車中、こんどは急に便意をもよおしてしまい、あわや野グソか、と悶絶しそうになる。その顛末はカットされているけれど、たぶん、ことなきを得たんでしょう。
 ともあれ、この例のようにほんとのドタバタもふんだんにあり、コメディ好きのぼくとしては(おとといも映画版 "Sex and the City" を観たばかり)、"Demon Copperhead" と同じ点数だけど、こちらのほうが読んでいてずっと楽しかった。それがだんだん、「長ぁい」と感じるようになったのが残念だ。(つづく)

(下は、この記事を書きながら聴いていたCD)

Christmas By Candlelight