今年のブッカー賞ロングリストに選ばれたのは、なぜか13作。このうち、ぼくが読んだのは6作だけ。しかも、ロングリスト発表以後に読んだのはたったの4作だから、あちらのファンの読書量とくらべるとお寒いかぎりだ。
だから「予想」と題してもヤマカンに近い。上の6作から選ぶしかない。が、いちおうイギリス各社のオッズを参考にして読んだので、これらはショートリストに残るかもしれない。ただしこのオッズ、例年ハズレが多いので、あまり当てにはならない。
さて、アメリカ馬の本命は、なんと言ってもピューリッツァー賞作家、Elizabeth Strout の "My Name Is Lucy Barton"(☆☆☆★★★)だろう。過去のブッカー賞受賞作、たとえば Julian Barnes の "The Sense of an Ending" などと似た〈人生しみじみ系〉の味わいがある。
Paul Beaty の "The Sellout"(☆☆☆★★★)も確実だと思うが、これはご存じ今年の全米書評家協会賞の受賞作。新味がないのが難点だ。アメリカ馬をレースに参加させた弊害のひとつかも。
イギリス連邦馬で本命の呼び声が高いのは、Deborah Levy の "Hot Milk"(☆☆☆★★★)。心にしみる場面が多く、これも〈人生しみじみ系〉。対抗馬は Ian McGuire の "The North Water"(☆☆☆★★)と目されているが、こちらは冒険小説・犯罪小説と言ってよく、ゲートインするのはむずかしそうだ。
David Szalay の "All That Man Is"(☆☆☆★★★)も〈人生しみじみ系〉。これは形式的には短編集。ってことは、実質的には長編という判断があったものと思われる。その意味では、選考委員諸氏の注目を集めていると言えるかもしれない。
ご存じノーベル賞作家、J. M. Coetzee の "The Schooldays of Jesus"(☆☆☆★★)は穴馬扱いされているようだが、ぼくはあまり買わない。彼のファンには申し訳ないが、もう旬の作家ではないと思う。
それより未読だが、A. L. Kennedy の "Serious Sweet" に注目したい。Kennedy といえば、ぼくは2007年のコスタ賞大賞受賞作 "Day" にノックアウトされた憶えがあるからだ。
というわけで、☆☆☆★★★を進呈した上記の4作に "Serious Sweet" を加え、ぼくのブッカー賞予想としたい。あ、ひとつ足りないか。では Coetzee をしぶしぶ追加。頭ひとつ抜けた大本命不在のレースかもしれませんね。以下、"Day" のレビューを再録しておこう。
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