ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"His Bloody Project" 雑感

 ゆうべ寝床の中で『センセイの鞄』をやっと読みおえた。2週間近くかかってしまったが、最後だけ一気読み。ぼくはこのセンセイと同じ年代なのではないか。おかげで目はウルウル。川上弘美、いいですなあ。これからも少しずつ日本文学を catch up しなければ。
 電車の中では、Graeme Macrae Burnet の "His Bloody Project" を読んでいる。1冊だけ読み残していた今年のブッカー賞最終候補作である。文学的な深みはさておき、物語としてはなかなかおもしろい。
 ほんとはこれ、もっと早く読めるはずだった。が、ショートリストの発表直後、英国の代理店とやらに注文したところ、これがひどい店だった。すぐに出荷準備中となったはいいが、1週間たっても何の音沙汰もない。そこで督促すると、「今日にでも発送します」との返事。
 それからさらに1週間、相変わらず梨のつぶてなので再度督促。すると、「在庫がないので別の店に発注した。キャンセルしたいなら応じます」という。もちろんキャンセルは受理されたが、それと同時になんと、商品を送ってもいないのにニセの発送通知。「英国の代理店」が聞いてあきれます。こんなにひどい店は初めてだ。仕方なくアマゾンUKに注文、今ごろやっと読んでいるという次第。
 最初の半分くらいは、いわゆる倒叙ミステリと同じスタイルだ。殺人犯が犯行以前から事件の一部始終を物語る、というやつです。ただ、作者はミステリを書こうと思って書いたのではない。犯人がすぐに逮捕され、あっさり犯行を自供しているからだ。これが純然たるミステリなら、犯人は完全犯罪を試みるのが定石。本書は結果的に、倒叙ミステリの形式になっただけと思われる。クライム・ストーリーというほうがいいかな。
 どんな事件かについては、ネタを割りすぎるとまずい。とりあえず、19世紀なかば、スコットランドのハイランド地方で起きた凄惨な殺人、とだけ紹介しておこう。ちなみに、海辺に面したこの村からは、かのスカイ島が望めるという。来年の夏あたり、まだお迎えが来ていなかったら行ってみたいな、とたまたま前から思っていたところだ。
(写真は、宇和島市来應寺の裏山の桜)