ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Autumn" 雑感 (1)

 前回まで Magda の "The Door" について長々と駄文を綴ってきたが、同書の序文を書いたのが Ali Smith。その Ali Smith の最新作 "Autumn" をいま読んでいる。
 これを見つけたのは、The Mookse and the Gripes の2017年ブッカー賞をめぐるスレッド。あちらのファンには、もう来年の同賞のことを話し合っている人たちがいるわけだ。なんと気の早いことか。それだけ関心の高い賞ということなんでしょう。
 ともあれ、家の書棚を見わたしたところ、Ali Smith の本はご存じ "How To Be Both" など何冊かあったが、恥ずかしながらすべて未読。それならいっそ、ということで最新作から手をつけることにした。ガーディアン紙が選んだ今年の優秀作品のひとつである。
 さて、表紙はタイトルどおり、いかにも秋らしい絵。しかもぼく自身、人生の晩秋にさしかかったせいもあって、てっきり小津映画のような物語にちがいないと思い込んでいた。
 当てはずれ。いまのところ、秋の話は一回しか出てこない。
 が、老人は登場する。Daniel という百歳を超えた老人で、療養所のベッドでほとんど眠ってばかりいる。
 その Daniel の見舞いによく訪れるのが Elisabeth (Elizabeth のミスタイプではない)という30代の女性。二人は20年来の知り合いで、出会った当時、Elisabeth は8歳の女の子。この二人の交流が、現在と過去にわたってほぼ交互に描かれる。
 といっても、いまの Daniel は眠りっぱなしなので、2016年の現在編で活発に動いているのは Elisabeth だけ。その言動がとてもユーモラスだ。また、過去編での Daniel とのやりとりも、どんな意図が隠されているかは不明だがおもしろい。イギリスの現代社会を風刺しているような気もするが、さてどうでしょう。
(写真は、宇和島市立明倫小学校の通学路に面した、旧友コウちゃんが住んでいた家。シャッターや自販機を除けば、昔の面影が色濃く残っている)