ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

L. P. Hartley の "The Go-Between" (4)

 ぼくの数え間違いでなければ、本書のレビューは(本ブログ未掲載のものもふくめて) 501本目。「青春」というキーワードで駄文の山を検索してみると、何冊か文学史にのこる青春小説が出てきた。
 Tolstoy の "Childhood, Boyhood, Youth"(1830)、Dostoyevsky の "The Adolescent"(1875)、Alain-Fournier の "Le Grand Meaulnes"(1913)、Sillitoe の "The Loneliness of the Long Runner"(1959)などである。Stendahl の "The Red and the Black"(1830)を加えてもいいかもしれない。これで見ると、青春小説にも意外に長い歴史があるものですな。
 さらに、EXCELに打ち込んでいる寸評で検索したところ、Flaubert の "Sentimental Education"(1869)、Joyce の "A Portrait of the Artist as a Young Man"(1916)、Graham Greene の "Twenty-One Stories"(1954)。こういったあたりは、青春小説の歴史を刻んできた名作と言っていいだろう。
 この中で「子供がいやおうなく大人へと成長する通過儀礼をえがいた」ものとなると、ううむ、どうでしょう。意外に少ないかも。Graham Greene くらいかな。上の作品をぜんぶ読み直してみないと何とも言えない。
 ただ、文学史にのこるほどではないが、「青春小説」と聞いて連想する、通過儀礼独特の〈ほろ苦さ〉が心にしみるものもある。ぼくのゴヒイキは、Herman Raucher の "Summer of '42"(1971)と、Jeffrey Lewis の "Meritocracy"(2004)。レビューも寸評も書き残していない作品から選べば、何がいいかな。いっそ日本文学から、『ノルウェイの森』や『青が散る』などはどうでしょう。
 こうした名作秀作と較べてみると、この "The Go-Between"、けっこう頑張ってるほうだと思う。ぼくはまだ完全に評価を定めたわけではないが、とりあえず☆☆☆★★★。点数評価のパクリ元、故・双葉十三郎氏の『西洋シネマ体系 ぼくの採点表』によれば、あの『カサブランカ』と同点である。
 決め手は幕切れだ。Leo 少年が年をとり、「50年後に舞台を再訪、ふたたび自分の傷と向き合った」ときのこと。詳細は省くが、とても切ない。「彼は経験により傷つきながらも、少年の純粋さを失っていないからだ」。
 このところ何度か書いたことだが、ぼくは今、innocence と experience の対立と融合という問題に強い関心がある。同じひとりの人間の心の中に経験と純粋さが同居し、その葛藤で苦しむ。それが人生の縮図なのか。ああ、また中島みゆきを聴きたくなってきた。
(写真は、宇和島市元結掛(もとゆいぎ)の八百屋さん。きのうアップした、亡きホリカワのおっちゃんの家の近くにある。この店先で、コレサワのおっちゃんが昔よく鰹節を削り、〈花かつお〉を作っていた。きれいなお店になったが、おっちゃんはもう亡くなってるかも)