天候不順と過労のせいか風邪をひいてしまい、今読んでいる本があまり進まないので昔のレビュー。
The Doctor's Wife (Paladin Books)
- 作者: Brian Moore
- 出版社/メーカー: Flamingo
- 発売日: 1988
- メディア: ペーパーバック
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…ブライアン・ムーアは邦訳が何冊かある作家だが、今検索した限り現役版は少なく、本書も翻訳は出ていないようだ。上に書いたとおり、途中までは「ハーレクイン・ロマンスも顔負けのメロドラマ」だし、突然宗教的な話になる結末もそれまでのロマンスと少々かみ合わない。それゆえ、文学「高踏派」の象徴のようなブッカー賞では分が悪かったものと思われるが、ぼくはかなり面白く読めた。
終幕だけ「高踏派」という場合、開き直って「文芸エンタメ系」に徹すればもっと面白かったのに、と思うことが多いが、本書は結末を無視しても充分面白い。最後が不完全燃焼なのは、ひねりすぎ、というより唐突すぎるからで、その点を除けば、日本ではあまり知られていない作家の埋もれた佳作と言ってよい。これからもこんな作品に出会いたいものだ。