旧作発掘第二弾。James Salter の "Light Years" (75) を読んでみたが、またもや空振りに終わってしまった。
Light Years (Vintage International)
- 作者: James Salter
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 1995/01/31
- メディア: ペーパーバック
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…とにかく、途中からページが進まなかった。上記のとおり、設定はメロドラマなのに描写は詩的という趣向が最初は面白かったが、お殿様そればっかりというやつで、中盤に至るも話に起伏がない。いや、あることはあるのだが、すべて想定内。これが現代の作家なら恥も外聞もなく、ど派手な嘘八百の物語を仕立てあげていることだろう。
その点、ジェームズ・ソールターはマイナー・ポエットのような作家で、丹念に心象風景を描いていく。大いに好感が持てると言いたいところだが、これほど凡庸な筋立てだと、「断片的に連続する情景を鑑賞」するのも骨が折れる。ストーリー性もやはり小説の重要な要素なのだと改めて痛感してしまった。(今週は、5月17日の日記で採りあげた Jenna Blum の "Those Who Save Us" がほぼ1ヵ月ぶりにニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストに復帰。思えばあれなど、最近読んだ本の中ではストーリー性抜群だったような気がする。http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080517)
これをぼちぼち読んでいるあいだ、なぜか久しぶりにベートーヴェンのピアノ・ソナタばかり聴いていたのだが、本の中身を忘れてしばし耳を傾けることが多かった。ヴェデルニコフの弾いた『ハンマークラヴィーア』も初めて聴き、思わず落涙しそうになるほど感動した。精密な心象風景と凄絶なドラマの合体。とりわけ後期のピアノ・ソナタほど、そんな作品と言えるかもしれない。
アナトリー・ヴェデルニコフ / ロシア・ピアニズム名盤選 2 ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第1番&第29番《ハンマークラヴィーア》 [CD]
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