これは勘の鈍いぼくでも、かなり早い段階でその後の展開と結末がほぼ分かった。読んでいる最中は、親に理解されない少年が主人公ということで『エデンの東』を連想したのだが、今思うと人物関係は立原正秋の『冬の旅』のほうが近い。映画なら、少年院つながりで東陽一監督の『サード』。
ともあれ、筋立てや登場人物、それから心理描写なども「いささか類型的」なのだが、「それでも夢中で読みふけった」。分かっちゃいるけどやめられない、というやつだ。面倒くさいので調べていないが、映画化されても邦訳が出てもフシギではないほど面白い。最後など、ほらほらもっと早く…してやれよ、と心の中で主人公を応援。で実際、予想どおり…となったときは、年とともに涙腺の弱くなっているぼくはすっかり参ってしまった。単純ですなあ。ネタばらしは控えたいが、映画『卒業』から得られる感動に近い。『リバー・ランズ・スルー・イット』のころのブラピなんか主役にぴったり。
今年のコスタ賞では、Sebastian Barry の "The Secret Scripture" と並んで最優秀長編賞を争った本書だが惜しくも落選。これは順当だと思うけど、青春小説の佳作ということで、せめてアレックス賞には選ばれてもよかったのでは…。「思わず目を疑うような場面もある」ので、「健全小説志向」にはそぐわない(?)のが選外の理由かな。