ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Marian Keyes の "The Brightest Star in the Sky"(1)

 アマゾンUKが選んだ昨年のベスト10小説のひとつ、Marian Keyes の "The Brightest Star in the Sky" をようやく読みおえた。これでやっと年が明けたような気がする。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。

Brightest Star In The Sky,The

Brightest Star In The Sky,The

[☆☆☆★★★] 中盤過ぎまで面白おかしいラブコメかと思っていたら、終わってみるとよく出来たヒーリング小説で、とてもハッピーな気分になれる。正体不明の「私」がダブリン市内のマンションの住人たちの生活を実況中継。それぞれの回想もふくめて「4階4様」、いや、住人とその関係者の数だけある人生模様、とりわけ恋愛沙汰がコミカルに描かれる一方、「私」の正体以外にも、まったく核心の読めない「事件」に向かって物語全体がカウントダウン。さらには、なぜかひどく思い悩んでいる風情の夫婦も登場するなど、ミステリ的な興味にも惹かれる。「事件」が起きたときには謎は三つとも解かれ、タイトルの意味もわかって心は晴ればれ。たしかにヒーリング小説だが、ややオカルト的というか宗教的な色彩もあるのが特徴だろう。男と女の出会いと別れに紆余曲折はつきものだが、それをセックスもふくめてドタバタ喜劇に仕立てあげながら、次第に介護や心のトラウマなどシリアスな問題を提示。最後には、喪失と苦悩を乗りこえて生きる愛のミラクルパワーを全開させる。「事件の核心」にひっかけて言えば、神様からのプレゼントのような作品だ。英語は日常的だが(日本人には)難易度の高い口語表現が目立つが、意味の解読に困るほどではない。