ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Tom McCarthy の “C”(2)

 昨日は本書の残り半分近くを珍しく「ちゃんと机に向かって読」み、そのあと無い知恵を絞ってレビューらしきものを書いたのだが、今読みかえしてみると、やっぱり「とんでもない勘違いのような気もする」。どこかの英文科の先生が目にしたら、これだから素人さんは困るんだなあ、と苦笑しそうだ。でもまあ、ぼくは仕事の合間に面白そうな洋書を読んでいるだけの文学ミーハーなので、自分の気のついた点、気に入った点をまとめるしかない。
 で、これはテーマ的にかなり難解な本ではないかと思う。面白いことは面白い、いや、相当に面白いのだが、はて、作者は何を言いたいのだろう、というやつだ。それを考えながら読んでいる途中に取ったメモをもとに書いたのが昨日のレビューで、もとより完全に読み解いた自信はない。その自信を得るには再読して確認する必要があると思ったが、そんな時間はとてもない。失笑されるのを覚悟で第一インスピレーションを優先させることにした。
 手がかりはいくつかある。たとえば、こんなくだりはどうだろう。"What's C?" "Carbon: basic element of life." (p.292) この life はもちろん「生命」という意味だが、本書のタイトルと引っかけているような気がしてならない。主人公の青年が何度か極限状況に置かれながら悲壮感を漂わせることなく、かえって euphoria を感じているのを読み、そのつど「存在の根底」「生の充足」などとメモっていたぼくは、上の会話に出くわしたとき、ああやっぱり本書のテーマは the element of life じゃないかな、と短絡してしまった。
 ただし、ほかにもいろいろな読み方が可能な作品だと思う。Tom McCarthy を専門に研究している先生がいるのかどうか知らないが、いくら紹介記事などほとんど読まないぼくでも、今度ばかりは、ほら、こんなふうにも解釈できるでしょ、と蒙をひらいてもらいたい心境だ。