ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Andre Maurois の “Climates” (2)

 帰省3日目。きょうは友人の車で高知の大堂海岸付近まで足をのばしたが、残念ながら通行止めのため、断崖絶壁で有名な当地の景勝は見物できず、帰りに宿毛の感陽島や空手海岸、須の川などを久しぶりに見てまわった。天気がよかったので、暗い冬の海というイメージからはほど遠く、夏とちがって空気が澄みわたり、はるか遠方まで見わたせた。<命の洗濯>というやつですな。
 さて "Climates" だが、ほんとうは帰省中にじっくり楽しもうと思っていたのに、おととい羽田から松山までの機内で読みはじめたところ、これが予想に反してやけにおもしろく、最近のぼくにしては珍しく一気に読みおえてしまった。いつものバスや電車の中だったら、まさしく「通勤快読本」になっていたことだろう。
 内容としては、他愛もない恋愛小説だ。アンドレ・モロワといえば、『英国史』で有名な歴史家・伝記作家で、ぼくも大昔、同書をかじり読みしたことがある。それゆえ、本書もさぞかし深いテーマの文学作品なのかと期待したら、意外にも軽いメロドラマ、文芸エンタメ路線だった。邦訳があるかどうかは、面倒くさいので調べていない。
 『赤と黒』や『ボヴァリー夫人』などを思わせる点もあるので「19世紀フランス文学の香りをたたえた」作品と評したが、筋書きは型どおり、人物も類型的。それゆえ、文学史にのこる傑作とは思えない。それが最近、どうして英語の新訳が出たのかは、序文を読んでいないので不明。
 まあこれは、重箱の隅をつつかず、ぼくのように一気に楽しむにかぎる。すると、古き佳き時代と「現代とのギャップに感慨を覚えることだろう」。ああ、おもしろかった!