ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jonas Jonasson の “The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared” (2)

 これはもうタイトルからしておかしくて、知り合いのオーストラリア人に、こんな本があるよと教えてあげたら、表紙をひと目見たとたん、プッとふきだしてしまった。それを見て、紹介したぼくも思わずニッコリ。これはつかのま、人生が楽しく思える作品である。
 内容と美点については、2回の雑感ときのうのレビューでけっこうふれたつもりだ。これ以上ネタを割ると、未読の方の興味をそいでしまう。
 そこできょうは、なぜ☆☆☆★★★という評価なのかを説明しておこう。そんなに楽しかったのなら、☆☆☆☆、いや、それ以上でもいいではないか。おたくはへそ曲がりだね、と思われているかもしれないからだ。
 へそ曲がりなのは事実だが、ぼくはこれを読みながら、じつはビリー・ワイルダー監督の『お熱いのがお好き』を思い出していた。あの三谷幸喜氏が「映画全体としても僕の中のベストワンになると思う」と述べたこともある傑作コメディーである。(ブルーレイの画質はすごくいい)。

 ぼくもゲラゲラ笑いころげながら何度か観たし、うちのドラ娘も大好きな映画なのだが、敬愛する故・双葉十三郎氏の採点では、なんと☆☆☆★★★。フタバさんはほんとに厳しい方でした。
 いったい、どこが減点材料なんだろうと前から不思議に思っていたが、今回、この "The 100-Year-Old Man ...." を読みおえ、これはとてもおもしろかったけれど、いくつか気になる点もあるなと思い、上の評価に決めたあと、『お熱いのがお好き』のフタバさんのレビューをじっくり読みかえしてみた。すると目についたのが、「前半、余りゲラゲラ笑うので、後半いささかくたびれてしまう」という一節。
 これはある程度、本書にも当てはまる。体力のないぼくは、途中でもう、「けっこう長い小説なので、ちょっと胃にもたれるのが玉に瑕」と感じたほどだ。もっと具体的に言うと、少し間延びした箇所がいくつかある。それから終盤、「抱腹絶倒もの」のエピソードのあと、「ボルテージがやや下がり、ワン・パターンも目だつようになったのが残念」。
 ……などという重スミのいちゃもんは忘れ、久しぶりに「人生、ブラボー!」と叫びましょう。