ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Sebastian Barry の “Days without End”(1)

 Sebastian Barry の "Days without End"(2016)を読了。周知のとおり、今年の1月に発表された2016年度コスタ賞大賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。

Days Without End

Days Without End

[☆☆☆★★★] 殺すか殺されるか。ひとりの命を救うために、もうひとりの命を奪わねばならないときにどうするか。本書は、人間がそういう究極の選択を迫られる限界状況をみごとにドラマ化した作品である。19世紀なかば、アイルランドから渡米した少年トマスが親友ともども酒場のミンストレル・ショーに女装で出演するなど、前半はコミック・リリーフもある。が、やがてふたりは陸軍に入隊。自然の猛威と戦ううちにインディアンと遭遇、激しい戦闘が始まる。勧善懲悪とは無縁のリアルな西部劇である。それが一段落したあと、こんどは南北戦争勃発。息づまるような白兵戦をはじめ、悲惨な戦争の現実が生々しく描かれる。ゆえにこれが最大の山場と思いきや、戦後なんと、さらに恐るべき修羅場が待っていた。映画でおなじみの無法者たちとの決闘シーンに固唾をのんだあと、ふたたびインディアンとの戦闘開始。いまや伍長のトマスは人生最大の選択を強いられる。序盤から数々のアクション・シーンを経て次第に高まってきた緊張が一気に沸点に達する瞬間であり、と同時に、上記の女装もこの極限へとつながる布石だったとわかるなど、すこぶる巧みな構成には、ただもう驚くばかり。しかもその中で、人間の善良さと残虐さが等しく浮き彫りにされ、また、神ならぬ人間には不完全な答えしか選べないという人生の苦い真実も読み取れる。善悪の彼岸にある、まさしく〈リアルな西部劇〉である。