ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

J.G. Farrell の “Troubles”(4)

 Geetanjali Shree の "Tomb of Sand"(2018)をまだ読んでいる。諸般の事情で、1日50ページ進むのが精いっぱい。
 といっても、べつにたいした事情ではない。まず、三軒先に住んでいる初孫のショウちゃんが、毎日のように「ジージーいる?」と遊びにやってくる。幼稚園が春休みになったからだが、楽しいけど疲れる。
 つぎに、2015年の本ブログ再開以後に書いたレビューの加筆修正。そこから手をつけたのは、それ以前のものより簡単に直せるだろうと思ったからだが大まちがい。なかには、どんな話だったかすっかり忘れていた本もあり四苦八苦。前後の記事を読んだり、Wiki で調べたりしながら作業を進めている。いまやっと、2018年の夏。多少は読みやすくなったような気もするけれど、もともと文字どおり拙文なので限界があり、せめて改悪でないのを祈るばかりだ。
 それから、そもそも "Tomb of Sand" が依然、☆☆☆★★くらいの出来で、あまりおもしろくない。digression の嵐というか、いろいろなスパイスやハーブの味が効きすぎたインド料理をつぎつぎに出され、しかもその量がハンパではなく食傷気味。でもまあ、山登りでいえば、胸突き八丁の急坂を越え、ようやく山頂が見えてきたところ。
 さてかんじんの "Troubles" だが、前回、前々回は、同書が本場イギリスでいかに高く評価されているかという記事だった。いま急遽チェックしたところ、邦訳はまだ出ていないようだ。たぶん、売れそうもない作品と烙印を押されてるんでしょうな。
 それでもぼくの見るところ、これはブッカー賞史上、まちがいなく屈指の名作である。きょうこそは、どこが、いかにすごいか、という落ち穂ひろいをしようと思ったのだけど、昼間にジムで10キロも走ったせいか、以上のイントロだけで疲れてきた。最後に、いままで読んだブッカー賞受賞作のなかから私的ベストテンを選んでお茶を濁しておこう。刊行順です。

  1. "Troubles" by J.G. Farrell(1970 ☆☆☆☆★)
   "The Siege of Krishnapur" by J.G. Farrell(1973 ☆☆☆☆★)
      "Midnight's Children" by Salman Rushdie(1982 ☆☆☆☆★)
  3. "Oscar and Lucinda" by Peter Carey(1988 ☆☆☆☆★)
  4. "Possession" by A.S. Byatt(1990 ☆☆☆☆★)
  5. "Sacred Hunger" by Barry Unsworth(1992 ☆☆☆☆★)
  9. "The Inheritance of Loss" by Kiran Desai(2006 ☆☆☆☆★)
10. "Wolf Hall" by Hilary Mantel(2009 ☆☆☆☆★)

 あれま、点数だけ基準にするとベストエイトにしかならない! それに、Farrell が二作というのが引っかかるし、Rushdie のものは大好きなわけではない。これらを削って、☆☆☆☆のなかから四作選んではどうか。
 あれこれ目移りして悩むところだが、ヒイキのヒキだおしというか、惚れた欲目というか、好みだけで決めるなら、

  2. "Moon Tiger" by Penelope Lively(1987 ☆☆☆☆)
  6. "The English Patient" by Michael Ondaatje(1992 ☆☆☆☆)
  7. "The God of Small Things" by Arundahti Roy(1997 ☆☆☆☆ )
  8. "The Life of Pi" by Yann Martel(2001 ☆☆☆☆)

 以上、番号をふったものがマイ・ベストテン。ううん、でもやっぱり、受賞作ではないけど、

  8. "Cloud Atlas" by David Mitchell(2004 ☆☆☆☆★)

を落としたのが気になる。2004年の受賞作は Alan Hollinghurst の "The Line of Beauty"(☆☆☆)。これがいかん。Martel の代わりに、Mitchell をムリやりネジこんでおこう!  候補作をふくめたブッカー賞ベストということで。
 それにしても、受賞作はまだ10冊以上読みのこしているし、未読の最終候補作にいたっては、ハナからパスしているものもふくめ数える気もしない。今後、以上のベストテンがどう変化するか、お楽しみはこれからだ!

(下は、この記事を書きながら聴いていたCD)

ブラームス:ピアノ三重奏曲全集