ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(2)

 先日届いた椅子用腰クッションの効果はまずまず。楽は楽だが、これで一気に腰痛が解消というほどではない。もっとも、そんなスグレモノなんてあるわけないんだけど。
 長時間すわっていられないので、もともと少ない読書量がさらに減。日英どちらの本も休憩しながら一日50ページ、それ以上はムリだ。
 ただ、めずらしく向学心が出てきた。『井上成美』の再読以来、いままでのように小説だけでなく、もっと学術的な本も読まなくては、と一念発起。積ん読の棚を見わたし、気になるテーマ「戦争」と「全体主義」に絞ってあれこれパラパラめくっている。
 その点、たまたま先月読んだ表題作は、戦争のほうと少し関係がある。主な舞台は分離独立後のインドとパキスタン。「アフガニスタンタリバンの問題もあり、『宇宙から見おろせば』ひとつの地域が実際は憎悪に満ちあふれ深く分裂している」。Most likely an alien looking down from space would immediately notice Hindustan and Pakistan so clearly glutted with lights that, borders visible or no, it would observe that there's always an air of celebration about that particular spot on that particular planet. How could it know that proclaiming divisions has become a celebration for some?  A jubilee of hatred. The joy of rifts.(p.711)
 これと同じパラグラフの前半には、こんなくだりもある。This is the era of the gleeful promotion of competition and enmities. When hate is on the rise, talk of love seems mushy and clammy.(p.710)ポイントだけ訳すと、「憎しみが増すなか、愛を語ることは感傷的に思える」。
 引用したページからも推し量れるとおり、本書は超大作。去年の国際ブッカー賞発表後に注文して届いた本をひと目見たとたんギヴアップ。こんなデカ本、いつになったら読む気になるんだい!
 それをほぼ一年後に読みおえたいま、上のくだりがもっと早く出ていれば、「饒舌でまわりくどい文体、吹き荒れるダイグレッションの嵐」などが災いして、「なにを食べているのか、どんな味かもわからなくなってしまったボリュームたっぷりのインド料理」にそれほど胃がもたれることもなかったろうに、と思われる。テーマに直結してますからね。いやはや、途中へこたれました。
 いかん。切りのいいところまで書こうと思ったけど、ここでもう腰が痛くなってきた。おしまい。(この項つづく)

(下は、この記事を書きながら聴いていたCD)

クッキン(SHM-CD)