去る連休中、持病の腰痛が再発。一定時間デスクにむかうこともままならず、さりとて橫になるとすぐに眠くなり、とてもじゃないが読書どころではなかった。
サポーターをずっと着用し、ストレッチでごまかし、いまは多少痛みが和らいできたところ。きょう届く椅子用腰クッションの効果が絶大なることを期待している。
というわけで、表題作を片づけるのがえらく遅くなってしまった。今年の全米批評家協会賞受賞作である。Ling Ma(1983 - )は中国系アメリカ人の小説家で、デビュー作は Kirkus Prize を受賞した "Severance"(2018 未読)。本書(2022)は彼女の第二作である。
短編集なのに途切れ途切れにしか読めず、すっかり印象がぼやけてしまった。最悪のレビューとなりそうだ。
[☆☆☆★★] チャールズ・ユウによれば、アメリカの中国系移民は約二百年の歴史を有しながら、いまだにアメリカ人としては認知されていないという。ゆえにその特異性やカルチャーショックなどがくだんの移民文学のテーマとなりがちだが、作者は定石を踏まえつつ極力ステレオタイプを排除。元カレや元カノとの再会、夫との断絶、気になる男との微妙な関係など、ふつうの日常生活のトピックスを採りあげ、アメリカナイズされた中国系移民の自然な姿を活写している。しかも複雑な人間関係を導入することで、その日常茶飯事にサスペンスフルな緊張が走り、ヒマラヤの雪男とのセックスや、大学教官室の秘密のとびら、妊婦の股間から胎児の腕が垂れさがるといったユニークな設定により、時には「日常世界のファンタジー」とでも呼ぶべき異空間が広がっている。各話とも結末はあいまいで、読者の想像にゆだねる自由解釈式。それが深い余韻をのこす場合と、そうでない場合とがあるが、総じてまずまず佳篇ぞろいの好短編集である。