ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Iris Murdoch の “The Bell”(6)

なぜこれほど鐘の意味にこだわるのか。タイトルだからということもあるが、この「予兆、暗示に充ち満ち」た作品のなかにあって、ほとんど唯一、鐘だけが予兆や暗示のままに終わっているからだ。 雑感にも書いたように、「どの描写、どのエピソードをとっても…

Iris Murdoch の “The Bell”(5)

救いを求め、'somewhere, something good existed' と思って Imber の田舎に帰った Dora が目にしたのは、もちろん鐘である。詳しい状況についてはネタバレの恐れがあり省略。とにかく、彼女は Toby 少年から〈その鐘〉の話を聞いて昂奮する。'Dora, who fel…

Iris Murdoch の “The Bell”(5)

さて Dora と鐘の関係だが、これこそネタを割らないように気をつけて説明しないといけない。Dora は Michael 以上に、いやおそらく本書でいちばん鐘に関与している人物だからだ。詳しく書くと、主筋の展開も何もかもバラしてしまう恐れがある。 差し障りのな…

Iris Murdoch の “The Bell”(4)

小説についてなるべくネタを割らないように説明するのはむずかしい。とりわけ、本書のようにサスペンスフル、ミステリアスな作品の場合、その緊張や謎の意味を不用意に明らかにすると興味が半減してしまう。 と肝に銘じつつ、前回の続きを書こう。ぼくが Mic…

Iris Murdoch の “The Bell”(3)

学生時代の夏休みに本書を初めて読んだとき、鐘のことをどう考えたのかはさっぱり記憶にない。ということはおそらく、何も考えなかったような気がする。その意味について思いをめぐらす余裕もなく、ただただ物語の渦中に引き込まれ、とりわけ「ハイライト前…

Iris Murdoch の “The Bell”(2)

雑感にも書いたとおり、これはぼくの青春時代で最も思い出ぶかい本である。しかも40年ぶりの再読ということで、読後は感無量……のはずだが、意外にそうでもなかった。 まず、「最後のほうの展開も結末もかなり憶えている」はずだったのに、実際は、え、こんな…

Iris Murdoch の “The Bell”(1)

このところ多忙と疲労で思うように本が読めず、40年前の夏休みと違って、最後は一気にひと晩で、というわけに行かなかった。また、レビューを書く時間もなかなか取れなかった。いざ書き出してみると、いっこうに先が続かない。さてさて困ったものだ。The Bel…

"The Bell" 雑感(4)

次第にハマりつつあるが、まだ無我夢中というほどではない。40年前の夏の夜も、初めは今のようにボチボチ読んでいたような気がする。それがどこかでスイッチが入り、そのまま徹夜して読み切ってしまった。そのどこかにどうもまだ達していないようなのだ。 と…

"The Bell" 雑感(3)

40年前の夏休み、本書を読みおわったときのことは、今でもありありと憶えている。ちょうど友人のオートバイに同乗して足摺岬へ行く日の朝、徹夜して読み切ったのだ。そのあとぼくは、行きも帰りも後部座席でずっと昂奮状態のままだった。そんな経験をしたの…

"The Bell" 雑感(2)

その年の夏休みが終わり、教室で出会った仲間の一人と、どんな本を読んだか話し合う機会があった。D. H. Lawrence、George Orwell、Aldous Huxley、Graham Greene とぼくが報告したところまでは、フムフムなるほど、という反応だったが、Iris Murdoch の名前…

"The Bell" 雑感(1)

昨秋、本ブログを再開してから今まで採り上げたのは、わずか4冊にすぎない。Herman Hesse の中短編集 "Klingsor's Last Summer"、Stendhal の "The Red and the Black"、Thomas Mann の短編集 "Death in Venice"、そして Tolstoy の自伝小説3部作 "Childho…

Tolstoy の “Childhood, Boyhood, Youth”

正月休みからボチボチ読んでいた Tolstoy の "Childhood, Boyhood, Youth" を昨日、やっと読了。15年ぶりの再読である。さっそくレビューを書いておこう。なお、星数による評価はまったく意味がないと思いつつ、今回もお遊びで採点してしまった。が本来、「…