ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Karen Kingsbury の "Sunrise"(1)

Sunrise

Sunrise

[☆☆☆★★★] 新シリーズの第1作…にしては旧シリーズの登場人物ばかりで、それぞれのエピソードも以前の続き。まったく新しい展開があるとは言えないのが難点かもしれないが、昔からのファンにはこたえられないはずだ。本質的には愛と救済の物語で、キリスト教の信仰が土台にあり、善意と愛情に満ちた作品である。舞台は例によってインディアナ州ブルーミントンの街で、当地のクリスチャン・キッズ・シアターの監督をつとめる若い娘とハリウッド・スターが婚約、パパラッチを追い払ってめでたく結婚するまでが主筋。そのほか、高校フットボール部員の飲酒事件や、プレイボーイの少年に迫られる少女の恋愛沙汰もあれば、妻を亡くした男が新しい女性と意気投合、元気を回復したり、それを見た娘が複雑な心境になったり、恋愛小説、青春小説、家庭小説などなど、いろいろな要素がバランスよく盛りこまれ変化に富んでいる。その筆さばきはじつに鮮やかで、キングズベリーは当代切ってのストーリーテラーに数えられるだろう。また、家族そろって養老院を訪れたクリスマスの風景など心温まるシーンが多く、随所に聖書の言葉が引かれ、神への感謝の念が行間から伝わってくる。それが本書の約束事であり、信仰や善意、愛情そのものを疑うような人物は出てこない。そのあたりが同じキリスト教作家でも、たとえばグレアム・グリーンなどと異なる点で、純文学の作品としては食い足りない。…などと理屈をこねず、感動的な物語に素直に感動するのが幸せな読み方である。英語は標準的でとても読みやすい。