ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“C”雑感

 今日はまず、ブッカー賞のショートリストについての感想の続きから述べよう。ぼくは David Mitchell が落選して Peter Carey が残るとはひどいなあと思ったので、あちらの記事をいくつか拾い読みしたところ、Peter Carey には受賞して欲しくない、と書いてあるブログを発見してまさに同感。
 ぼくが読んだなかで大本命に推していた Mtichell だが、やはりぼくと同じく、え、と驚いた人が多いようだ。ただし、先月20日の日記にも書いたように、「秀作ではあっても傑作とまでは言えない」ので仕方がないかな、という気もする。Mitchell にはまた次の機会にもっと優れた作品で受賞してほしい、という昔からの彼のファンらしい読者の意見も見かけた。
 さて、今週は目が回りそうなほど忙しく落ちついて本が読めないのだが、それでも通勤中に眠い目をこすりながら、William Hill のオッズによると1番人気の候補作、Tom McCarthy の "C" に取りかかった。まだほんの少ししか読んでいないので文字どおり雑感にすぎないが、ううむ、これはかなり玄人ファン向きの渋い作品ですね。ハードカバーであることを抜きにしても、ぼくのように電車やバスの中ではなく、ちゃんと机に向かって読むべき本でしょう。
 舞台は20世紀初期のイギリスかな、どこだか知らないけど、とにかく田舎の屋敷。養蚕業を営んでいる家なのだが、そこの主人が同時に聾唖学校を経営しているらしく、今日はその学校主催の野外劇のくだりまで読み進んだ。主人公は、はて、いちばん登場回数が多いのは幼い息子とその姉かな。ともあれ、あまり筋らしきものはない。母親の出産に始まり、息子が川で溺れかけたり、姉が化学実験をして爆発事故を起こしたり、ドタバタ気味の児童劇があったり、というのが今までの主な事件だが、その描き方がどこかオフビート。子供たちだけでなく父親もエキセントリックな人物で自分のことしか頭になく、独断的な言動が目だつ。何が言いたい作品なのか皆目不明だが、とにかく事件にしても人物にしてもフシギな味わいがあって次第に惹きつけられている。そのうち何とか目鼻をつけたいものだ。