ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Mary Nichols の “The Summer House”

 昨日、家に帰ってから Mary Nichols の人気小説、"The Summer House" を読みおえたのだが、レビューを書く時間は取れなかった。何とか思い出しながら書いてみよう。

The Summer House

The Summer House

[☆☆☆★★] 第二次大戦中、空襲下にあるロンドンと片田舎の貴族の館で、第一次大戦中の悲劇に端を発した、親子の情愛と男女の恋愛をめぐる典型的なメロドラマが繰りひろげられる。家族の反対と無理解、世間の中傷や偏見、当事者同士の誤解と対立、さらには戦争の惨禍や運命のいたずらなど、数々の障害と出会いながらも最後は…。開幕早々からおおよそ見当のつく展開で、人物造形も内面描写もいささかステロタイプ。幕切れ近くで主な登場人物が一堂に会するまでに至る経緯にしても、都合のいい偶然を利用しながら物語を作っているきらいがある。が、苦難にめげず清らかな心を失わないヒロインたちの姿は感動的だし、脇役が多数登場して副筋を盛りあげるなど、人物の操作も定石どおりで手馴れたもの。ヒーローが空軍パイロットということで、映画「空軍大戦略」の裏話とも言えるイギリス人好みの作品だが、われら日本人にも夏の緑陰読書、ふだんなら通勤中に楽しむのにもってこいの本だろう。英語も標準的で読みやすい。