忙中閑あり、「武士の家計簿」を見に行った。「日本映画は見ないのか」という友人のひと言がきっかけだが、映画館に足を運ぶのは8月以来。十分満足できる出来ばえで、いい映画を見たあとは気持ちがシャキっとする。おかげで Robin Pilcher の "A Matter of Trust" を一気に読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★] いわゆる純文学を構成する要素として、人生の問題の追求、人物造形、心理描写などが挙げられるとすれば、本書はどの点から見ても食い足りない。
ステロタイプが目立つからだが、愛と憎しみが渦巻く青春小説、4半世紀におよぶファミリー・サーガとしてのストーリー展開は紆余曲折があって面白い。とりわけ終盤の盛り上がりは最高。重箱の隅をつつくのをやめ、要するに文芸エンタメ路線として割り切れば、流れに乗ってすいすい読める。青春時代、
スコットランドの田舎町で友人以上、恋人未満の間柄だった2人が突然の
破局。その理由もわからぬまま旅だった傷心の娘は、やがて旅先のニューヨークで最愛の夫と出会い、夫とともにレストランの経営に腕をふるう。一方、
スコットランドでは母親の死後、大邸宅に住む養父に財産問題が…。誤解と対立、そして和解をめぐるハートウォーミングな物語で、娘の恋した少年がレーサーを夢見て特訓に励むシーンなど思わず引きこまれる。英語は平明でとても読みやすい。