去年のロサンジェルス・タイムズ紙小説大賞(LA Times Book Prize for Fiction)受賞作、Rafael Yglesias の "A Happy Marriage" を読了。これでようやく年が明けたような気がする。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★★] たしかにテーマは「幸せな結婚」。しかし同時に、涙なしには読めない、ある夫婦の出会いと別れの物語でもある。三十年の時を隔てて過去篇の恋愛小説と現在篇の家庭小説が平行して進む展開で、まずそのコントラストが面白い。処女作の成功後、ずっと売れない若手作家エンリケが目の覚めるような美人マーガレットと出会い、恋をする。恋敵とのつばぜり合い、初デート、初キス。うぶなエンリケのあわてぶりはコミカルそのものだ。三十年後、マーガレットはいまや末期ガンに冒されて死の床にあり、映画脚本家に転じたエンリケが献身的に看病している。延命治療を拒否、自宅でホスピスのケアをうけながら、葬儀や墓地の手配まで自分の希望を通すマーガレット。彼女と両親との対立、小説家として挫折したエンリケの苦悩、離婚の危機などもふたりの心に去来するなか、やがて死のカウントダウンがはじまる。読んでいて胸が苦しくなり、その苦しさは時に耐えがたく、青春時代のドタバタ劇に話がもどるとホッとする。だが、こちらもある結末にむかってカウントダウン。交差するふたつの物語のテンポがしだいに加速し、「幸せな結婚」を象徴するふたつの事件となって幕を閉じる。男と女が出会って結ばれ、そして死別する。煎じ詰めるとそれだけの話なのに、得られる感動は「それだけの話」では済まされないほど大きい。結婚はやはり人生の大事なのだと、あらためて思い知らされる秀作である。