ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Peter Rock の “My Abandonment”

 去年のアレックス賞受賞作の一つ、Peter Rock の "My Abandonment" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆★★★] 終幕近くまで秀逸なロード・ノヴェル、そして冒険小説。オレゴン州ポートランド。13歳の少女キャロラインが森林公園のなかで父とふたり人目を避け、身分を隠しながら暮らしている。キャロラインの一人称一視点から描かれるこの不思議な野外生活は、メルヘンのような味わいもあってじつに蠱惑的だ。親子が警察に保護されるくだりなどサスペンスフル。その後、ふたりはいったん農場で生活しはじめるものの、やがて放浪の旅に出かける。なにから逃れようとしているのか不明のまま、大自然のなか、時には町中でつづく謎の逃避行。吹雪に見舞われたり、危険な相手に襲われたり、手に汗握るシーンもあって目が離せない。ただ、結末にはがっかりした。現代版『森の生活』ともいえる作品だが、ソーロウのように思想的基盤があるわけではなく、キャロラインが自然のなかの生活にこだわる動機がはっきりしない。残念だ。