ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jojo Moyes の “Me Before You” (1)

 イギリスの最新ベストセラー、Jojo Moyes の "Me Before You" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2016年、テア・シャロック監督によって映画化され、日本でも『世界一キライなあなたに』として公開されました)。

[☆☆☆★★] よく出来たヒーリング小説だ。全体の流れこそ冒頭の数章からすぐに察しがつき、ホレ思ったとおり、と斜にかまえて読んでいたが、けっきょく引きこまれてしまった。なにより主人公の若い女性ルーが好感度抜群! 彼女は台所の苦しい一家を支えるべく、ヘルパーの経験もないのに陽気な性格を買われ、交通事故で脊髄を損傷した富豪の息子ウィルの介護を手伝うことに。軽いノリのコミカルな現代娘らしいルーだが、じつは自分に正直で正義感がつよく、猪突猛進、熱血ぶりを発揮する一方、心の奥に深い傷を秘め、非常に繊細で情にもろい。そんなルーと接するうち、車椅子の生活で固く心を閉ざしていたウィルはしだいに明るさを取りもどしていく。定石どおりの展開だが、主筋と副筋の組みあわせがうまく、また喜びの絶頂と悲しみのどん底が連続するなど起伏に富み、視点も適宜変化。さまざまな工夫がほどこされ、ついページをめくってしまう。献身的な愛のすばらしさに胸を打たれ、障害者の絶望の深さを知ってしばし茫然。その絶望と健常者はどうむきあえばいいか――それがラストの読みどころだ。