ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Donna Tartt の “The Secret History”(1)

 Donna Tartt の "The Secret History" (1992) を読了。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆] 看板に偽りあり。重大な秘密が長い歴史のなかで語られることはない。アメリカ北東部ヴァーモント州の大学に入学したリチャードが、一年たらずのあいだで遭遇した一連の事件を後日、実況中継風に回想。名づけて〈青春犯罪小説〉である。リチャードは変人という評判の教授のゼミに入り、おなじく風変わりな学生たちと交流。次第に不安に満ちたミステリアスな空気が流れる。そこまではいいのだが、謎の正体が明かされたとたん退屈する。まず最初の事件からして蠱惑的なものではない。やがて第二の殺人が起きるまでは、いわゆる倒叙ミステリ。犯行直前さすがに緊張が高まるものの、途中から結末が読めてしまい白ける。犯行後、その犯罪が各人の心理や行動に影響をおよぼすプロセスも通俗的で、端役や小道具の説明が多すぎるなどかなり冗漫。コミック・レリーフが挿入されるも笑えず、深刻な調子を帯びるわりに倫理の問題へと発展することはない。青春小説といえば挫折とイニシエーションが定番のテーマで、本書もその路線を守っているのだが定石どおり。このように青春と犯罪、どの要素を取っても中途半端で面白みと深みに欠ける青春犯罪小説である。

(写真は宇和島市来村(くのむら)川。昔はこのあたり、堀部公園の下手で子供たちがよく泳いだものだ、という話を近所の人から聞いた)。