相変わらず過去記事の整理中。きょうも前回同様、本ブログでは未発表のレビューでお茶を濁しておこう。
なんだ、それならコピペすればいいだけじゃん、と思われるかもしれないが、昔のレビューほど〈拙文度〉が激しい。しかも、点数評価をしていない場合が多く、それどころか、え、これ、どんな小説だっけ、ということさえある。
分類したい記事まで手直しする余裕はないので、暫定的に点数を付けるだけにしているが、初公開に近いレビューとなるとそうは行かない。
と、ここまで書いて Wiki を調べると、なんとフィリップ・ロス、今年5月に亡くなっていたのですね。ちっとも知りませんでした。
ぼくは大学時代、"Portnoy's Complaint"(1969)を読んだことがあり、きょう採り上げる "The Human Stain"(2000)を読んだのが記録によると2006年。あまり縁のない作家だったが、謹んでご冥福をお祈りします。
なお、おなじく Wiki によれば、本書は2002年に映画化され、邦題は「白いカラス」とのこと。これまた初耳でした。いったい何千周遅れなんでしょうね。
[☆☆☆★★] 正確には★★は1つ半だが、四捨五入で2つ。「差別発言」で退職を余儀なくされた老教授が、40歳近くも年下の女性と恋仲になり……という裏表紙の紹介文や冒頭場面などから、甘いメロドラマを期待して読みはじめると酷い目にあう。読めば読むほど、ヘヴィな内容がつづくからだ。人種差別、性的虐待、ヴェトナム戦争の後遺症など、ここにはヴェトナム戦争はさておき、現代のアメリカがかかえる諸問題の縮図が端的に示されている。しかしながら、そうした現象はアメリカ社会というより人間存在そのものの問題なのだ、と著者は述べているように思う。というのも、老教授に敵対するフランス生まれの若い美人教授もふくめ、本書の主要な人物はすべて、先天的なハンディであれ後天的なトラウマであれ、それぞれ深い心の傷の持ち主で、彼らがその傷とどう対峙していくかが物語の原点になっているからだ。力作である。ただし、「差別発言」をはじめ、老教授が非難の的となる設定にかなり無理があり、その無理を自然なものにしようとするためか、饒舌にすぎる点が惜しい。