このところ、朝起きると喉が痛い、鼻水が出る。ヤバイ、ひょっとしてインフルかも。そのうち夢でも見ているように一日が終わり、よかった、ふつうの風邪だった、とひと安心。
というわけで、いま読んでいる本、どれもさっぱり進まない。寝床の中の『吉祥天女』でさえ。吉田秋生のコミック、好きなんだけどな。
豊島ミホの『檸檬のころ』も、いいんだけど、どの短編も先が気になるほどではない。風邪をこじらせないように、と数ページで閉じてしまう。
さて、本題の "Look at Me"。こんな昔の本(1983)を読もうと思ったきっかけは、例によって一種のジャケ買い。先日取り上げた L. P. Hartely "The Go-Between" がとてもよかったので、その関連本を米アマゾンで検索していたら、Anita Brookner のこの本が目にとまった。
そこで書棚を見わたすと、ありました、ありました、積ん読の山の中に。だからほんとはジャケ買いじゃないけれど、気分的にはそんなものです。
タイトルと関係のある箇所は、まずここだ。.... I have noticed that extremely handsome men and extremely beautiful women exercise a power over others .... I find such people ― and I have met one or two ― quite fascinating. .... I recognize that they might have no intrinsic merit, and yet I will find myself trying to please them, to attract their attention. 'Look at me,' I want to say. 'Look at me.' (pp.14-15)
この「私」が主人公の Frances。どうやら十人並みの女性らしく、こんな記述もある。If my looks and my manner were of greater assistance to me I could deliver this message in person. 'Look at me,' I would say. 'Look at me.' (p.20)
そんな Frances の前に現われたのが美男美女のカップル Nick と Alix。いま読んでいるところでは、Frances は夫妻にどんどん惹きつけられていく。が、ストーリーが大きく動いているわけではない。この三人をはじめ、主な登場人物のキャラがみっちり書き込まれたあと、ようやく、ほんとにようやく動きだしそう、といった程度だ。
話がテンポよく進む豊島ミホの短編とはまったく好対照で、同じ女流作家でも、こうも違うものかと驚くばかり。べつに大した発見ではないが、ひょっとしたらこれ、彼我の文学、さらには伝統や文化の相違とも関係あるかもしれませんな。
ところで、これを書きながら聴いていたのは、どれも少しずつだが、シュムスキー盤「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」、アルヴォ・ペルトの「タブラ・ラサ」、そしてお決まりの中島みゆき。
3枚とも、ぼくには心にしみる。「無伴奏」も「タブラ・ラサ」もそれぞれ一ヵ月、ひたすら聴きつづけたことがある。
前回、みゆきの初期のアルバムはBGMには向かない、と書いた。ほんとにそうかなと思い、久しぶりに聴いたのが「生きていてもいいですか」。途中までは意外に聞き流せたのだけれど、「エレーン」で落涙。やっぱり、BGM向きじゃないですね。
(写真は、宇和島市元結掛(もとゆいぎ)の町内風景。ぼくの住んでいた貧乏長屋はとうになく、あとに豪邸が建っている。が、近くの古い民家のたたずまい、とりわけ夕景に昔の面影がある)