ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Mohsin Hamid の “Exit West”(1)

 ゆうべ、Moshin Hamid の最新作、"Exit West"(2017)を読了。眠かったのでレビューはきょうに回すことにした。はて、どんな駄文になりますやら。

Exit West: SHORTLISTED for the Man Booker Prize 2017

Exit West: SHORTLISTED for the Man Booker Prize 2017

[☆☆☆★] いまや先進国の移民問題には、適切な解決策はないのかもしれない。本書は近未来のSF的な設定により、移民と先住民の対立を先鋭化させることで、現代の深刻な状況を浮き彫りにしたものである。街なかに突然出現したドアを抜けると、ドバイへ、ロンドンへ、サンフランシスコへと瞬時に移動。政府軍と過激派の戦闘が絶えない街を出発点に、恋人たちは安住の地を求めて必死の脱出劇を繰りひろげる。このロンドン編まではサスペンスに満ちておもしろい。大量の移民流入により国家は分裂状態、虐殺の危機が迫り、正義の意味が問われる一方、当初は仲むつまじかった二人にも不協和音が生じる。こうした不穏な情勢と不安な心理のコントラストはとても鮮やかで座布団一枚。が、シスコへ飛んだあたりから少々散漫な展開になる。愛する者との別れ、喪失の悲しみを共有することで絆が深まるという指摘は傾聴に値するものの、もちろん移民問題の抜本的な解決にはつながらない。祈ることしかできないという嘆きも当たり前。そんな状況で二人の関係がどうなるかも知れたこと。快調な滑り出しだっただけに、うやむやな結末に不満がつのる。