ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Mansion" 雑感(2)

 本書は登場人物の名前を冠した三章から成り、きょうはジムに出かける前、やっと最終章 'Flem' に突入。フォークナーにしてはやはり読みやすい。
 余裕のできたところでフォークナー英語のむずかしさについて、こんどは文法レベルでコメントしておこう。大昔、"The Sound and the Fury"(1929 ☆☆☆☆★)を読んでいるときにも気がついたのだが、関係代名詞や接続詞の that の用法が、え、こんな使い方あったっけ、と首をひねる場合がある。
 むろん多分にぼくの不勉強のせいなのだが、本書で見つけた簡単な例はこうだ。But although the military never looses any piece of paper once it has been written on and signed (anything else yes, it will abandon or give away or destroy, but a piece of signed paper never, though it have to subsidise and uniform a thousand people to do nothing else but guard it), that it would inevitably reappear someday even if it took a hundred years, that would be too long also.(p.268)

 まず断っておくと、it have はミスタイプではありません。問題の that だが、that it の that は接続詞と思われるのだけど、これ、現代英語ならまず書かないところだろう。それから that would の that は関係代名詞のようだが、ふつうは which のはずだ。それともこの that は、years でいったん文を止め、it took a hundred years を指した代名詞なのだろうか。いや、やっぱり関係代名詞だと思う。
 関係代名詞 that については、D・H・ロレンスも再三、カンマのあとで使っているのでビックリしなかったけれど、接続詞のほうはちょっと珍しいかもしれない。ともあれ、これは「簡単な例」。やっかいな箇所は書き写すだけでシンドイです。
 さて前回、「内容も易しくなっている」と報告したが、その後もそれほど複雑なものではない。いや、分かってみると本書にかぎらず、このスノープス三部作はわりと単純な話で、ひとつには、貧乏白人の Flem が成り上がる。それから、ホレたハレたのメロドラマが意外に多い。さあ終盤どうなりますか。といっても、結末はちらつき始めているのだけれど。
(写真は、愛媛県宇和島市津島町にある禅蔵寺薬師堂。県指定有形文化財とのことだが、今回帰省するまで寺の存在さえ知らなかった)

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