Evelyn Waugh の "Sword of Honour"(1965)をボチボチ読んでいる。周知のとおり、これは "Men at Arms"(1952)、"Officers and Gentlemen"(1955)、"Unconditional Surrender"(1961)という三部作が、上のタイトルのもとに合冊されたものだ。
ぼくとしては〈連作シリーズ〉の一環で、Joyce Carol Oates のワンダーランド四部作、Lawrence Durrell のアレクサンドリア四重奏、そして Faulkner のスノープス三部作に引き続き、これで今年の締めにしようと思って取りかかった。
が、年末ともなると何かと雑用に追われ、文字どおりボチボチしか読めない。年内の完読は無理かも、という気がしてきた。英語の難易度はそれほどでもないのだけれど、Waugh 独特のひねりの効いた表現を味わうためには、腰をすえて取り組まないといけない。が、その時間があまりない。
というわけで、さしあたりスノープス三部作を駆け足でおさらいしておこう。きょうはまず第一巻の "The Hamlet"(1940)。
これは読んでいる途中も書いたが、ほんとうにむずかしかった! つくづく自分の英語力のなさを痛感した次第です。あまりに手ごわいので、文庫本で翻訳が出ていればカンニングしようと思って検索したところ、冨山房版フォークナー全集第15巻「村」は絶版。むろん文庫本にもなっていない。あきらめて自力で頑張ることにした。 悪戦苦闘の末、第三巻 "The Mansion"(1959)を読みおえてから米アマゾンを覗いてみると、同書について difficult to read と題されたレビューを発見。ああ、ネイティブでもそうなんだ、とホッとしましたね。その第三巻より第一巻のほうがはるかに難解だった。
それにひきかえ、物語そのものは分かってみれば意外に単純だと思う。南北戦争の余韻がまだ強く残る南部の村で、貧乏白人の Flem Snopes が才覚を発揮して成り上がっていく。これをベースにいろいろなエピソードがダイグレッション気味に絡みあい、その破天荒ぶりが面白い。「突然緊張が走り、ドタバタ喜劇が起こり、人びとが互いに感情と欲望をむき出しにする。打算とエゴイズムこそ人間の本質なのだという悲劇的人間観が迫力満点のアクションを通じて、またコミカルに示される」。
フォークナーの作品としては、日本ではあまり論じられることがないかもしれない。長編の骨格となるストーリーが、代表作 "The Sound and the Fury"(1929)や "Absalom, Absalom"(1936)などと較べると弱いせいだろうか。それらと相前後して書かれた短編がのちにひとつの長編にまとめられたという本書の成立事情からして、各エピソードの面白さが売りの作品とも言えよう。そのハチャメチャぶりは三部作中随一だと思う。
ただ、それを楽しむには相当骨が折れる。いやはやもう、マゾヒスティックな快感ですな。
(写真は、愛媛県宇和島市の九島大橋。10月の帰省中に撮影)