昨年末に読みはじめた Evelyn Waugh の "Sword of Honour"(1965)は、切りのいいところへ進むまでにあえなく大休止。たまたま先月、長年の宿題のひとつ、スノープス三部作をやっと片づけたばかりなので、年始めの記事は「なにから読むか、フォークナー」。
とカッコいいタイトルを付けたものの、Vintage 版 "The Mansion" の巻頭に載っているフォークナーの作品リストを見ると、ぼくが読んだことがあるのは全28冊中、11冊だけ。まことにお恥ずかしい次第だが、それでも主な長編はだいたいカバーしている。既読の作品について、どんな順序で取り組んだらいいか記しておこう。
というのも、ぼくのように普通の英語力の持ち主の場合、興味半分、ランダムに手を出すと悪戦苦闘すること必至だからだ。内容はもちろん英語的にも難解で、たとえば、接続詞や関係代名詞の that が正用法ではないこともあるのは前に書いたとおりだが、
"The Mansion" でもこんな例を見つけた。What happened that we set exactly three oclock as the magic deadline in this-here business?(p.431)
まず断っておくと、oclock はミスタイプではない。ここでフシギなのは、What happened のあとに文が続いていることだ。What happened that made us set .... の意だろうとぼくは解したのだけれど、こんな that の用法あったっけ? 少なくとも「ジーニアス英和大辞典」には記述がない。What happens that = Why という慣用表現があるのかな。それとも It happens that SV .... の疑問詞疑問文? いずれにしろ正用法ではないような気がする。(追記:What happened に疑問の感情があり、その原因を示す that 節を導く接続詞の用法という解釈も成り立つのでは、と後日考えた。追記2:その後、以下の記事でこの問題を解決)。
と、そんな疑問に駆られながら「錯綜する言葉の森」をさまよい歩くことが少しでもないように、次の順に読んではどうだろうか。(レビューのないものは読書記録のメモで代用。表紙をアップしました)。
1. "As I Lay Dying"(1930 ☆☆☆★★★)「非論理的な激しい情念を、章単位の内的独白で」。
As I Lay Dying (Vintage International)
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2. "Sanctuary"(1931 ☆☆☆★★★)「不条理と暴力、激しい詩的描写」。
Sanctuary (Vintage International)
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この二作はフォークナーにしては簡単、かつ、めっちゃくちゃオモロー!(古いですな)。フォークナーが軽く書き流した作品とのことだが、それだけに入門編としては最適だろう。
3. "The Wild Palms"(1939 ☆☆☆☆★)
これも物語として非常に面白い。かつ芸術的な作品なので、フォークナーの至芸が楽しめる。
4. "Light in August"(1932 ☆☆☆☆★)「本能的な人種意識、重層的な技法」。
Light In August (Vintage Classics)
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もし一冊だけ読み返すなら、これかもしれない。
5. "The Sound and the Fury"(1929 ☆☆☆☆★)「意識の流れ、暴力的な情念」。
The Sound and the Fury (Vintage International)
- 作者: William Faulkner
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意識の流れという技法、馴れてみるとそうむずかしくはない。あ、ほんとはここにカンマやピリオドがあるんだな、というつもりで読むのがコツ。
6. "Absalom, Absalom!"(1936 ☆☆☆☆★★)「元祖メタフィクション。人間の根底に潜む種の原理」。
Absalom, Absalom! (Vintage International)
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フォークナーの最高傑作だろう。巻末に年代記と家系図があり参考になるが、たしか一箇所だけ間違いがあったと記憶する。ともあれ、以上の6作がぼくのオススメ。あとはフォークナーがお好きなら。
7. "Go Down, Moses"(1942 ☆☆☆☆)「熊狩りの話が面白い。やはり人種の話」。
Go Down, Moses (Vintage International)
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8. "Intruder in the Dust"(1948 ☆☆☆☆)
9. "The Hamlet"(1940 ☆☆☆★★★)
10. "The Town"(1957 ☆☆☆★★)
11. "The Mansion"(1959 ☆☆☆★★★)
ぼく自身の今後の予定としては、"Requiem for a Nun"(1951)、"A Fable"(1954)、"The Reivers"(1962)を読んで長編はおしまい。あとは短編集を、と思っているのだけど、はて何年先になりますやら。
後記:以下、後日読んだ作品を順にアップします。
12. "A Fable"(1954 ☆☆☆★★★)
13. "The Reivers" (1962 ☆☆☆★★★)
14. "Flags in the Dust"(1929 ☆☆☆★★★)
15. "Requiem for a Nun"(1951 ☆☆☆★★)
16. "The Unvanquished"(1938 ☆☆☆★★)