ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Reproduction" 雑感 (2)

 北陸旅行から帰ってきて約2週間。どうやら新型肺炎には感染していなかったようだ。が、1週間前に税務署へ確定申告に出かけ、混雑のなかでかなり手間取ってしまったのが気になる。ぼくはもともと風邪を引きやすいほうで、ついきのうも鼻水が止まらなくなり、あわてて常備薬を服んだところ。大丈夫なのかな。
 ともあれ、いまはほとんど家にいる。外出するのは、近所に住んでいる初孫のショウマくんを連れ、家の前にある公園へ遊びに行くときくらい。テンプの仕事の流れで2月からいち早く始まった在宅勤務も開店休業中。読書と映画・音楽鑑賞の優雅な毎日と言いたいところだけど、こんなときにかぎってテレビが故障してしまった。
 結局、確定申告の帰りに大型量販店に立ち寄って買い替えることにしたのだけれど、商品が届くのはずっと先になるという。それまで映画はパソコンで観るしかない。ところが小さな画面だと興味半減。昔のテレビドラマならどうかと旧版「隠密剣士」をセットしてみたが、やっぱりつまらなかった。おどろおどろしさがイマイチ物足りない。
 救いは音楽で、このところシンガーのABC順に聴いているジャズヴォーカルはどれもゴキゲン。雷鳴から始まるスー・レイニーの「雨の日のジャズ」、恥ずかしながら初めて聴いたけど、とってもしゃれてますな。
 一方、ジャズを流しながら読んでいる本は相変わらず面白くない。この表題作、読めば読むほど欠点らしきものが目についてしまう。いまは現代の話で、若いシングルマザーだった Felicia の息子 Army も36歳。実の父 Edgar がガンにかかったと聞き、生まれて初めて会いに行く。You're ― Twice the legal age, Army said. Neither man said I not cussing anything else, it's not cussing had anything to say. .... Nice place, Army said. Edgar led Army down the long hallway come on to the kitchen.(p.376)
 このくだりに始まった叙述形式ではないのだけれど、I not cussing と it's not cussing、そして come on はいわば脇ゼリフ。本文より小さな活字で、通常のセンテンスより少し上の位置に印刷されている。作者(Ian Williams という若手作家で、本書は彼の処女長編らしい)としては、そういう工夫をほどこさなければならない必然性を感じたのだろうが、それが読者には煩わしいことこの上ない、とまでは考えなかったか、考えても気にしなかったようだ。
 それより何より、その必然性というのがぼくにはさっぱり理解できない。こんなスタイルでしか伝えられないメッセージとは、いったい何なのだろう。
 もちろん、かみ合わない会話の面白さなど美点もいくつかあり、それはなんとかレビューに反映させたいと思っている。が、あともう少しなのに一気呵成に読了というわけには行きそうもない。きのうなど、きょうこそ片づけようと意気込んで読みはじめたら、「ジージー」と声がするのでつい孫と遊んでしまった。

(写真は兼六園。先々週撮影。『ゼロの焦点』に出てきた。清張ミステリには恋愛小説とトラベルミステリを混ぜ合わせたような作品群があり、同書はその走りだろう)

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