ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Edwidge Danticat の “Everything Inside”(1)

 きのう、今年の全米批評家協会賞受賞作、Edwidge Danticat の "Everything Inside"(2019)を読了。この賞は前年度の作品が対象なので、正式には2019年の受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 

Everything Inside: Stories (English Edition)

Everything Inside: Stories (English Edition)

 

 [☆☆☆★★] 多民族国家アメリカに住む移民とその子孫には、いまさら言うまでもなく、故国の歴史にかかわる独特の複雑な物語がある。そこに文学が生まれる。このうち本書は、主にマイアミ在住のハイチ系移民の苦難に満ちた生活を描いた全八話の短編集。別れた夫から、元夫の現在の妻から、音信不通だった不倫相手から、はたまた子供のころ、いっとき仲よしだった旧友から連絡があり、意外な真実を知らされた女たち。回想と苦悩のうちに、愛する人びととの心のつながりを求めながら、超えようとして超えられぬ断絶の悲しさが静かに浮かびあがる。独立記念日や新年を祝う花火の華やかさと、それを見物するヒロインの心中に去来する思いの深さなど、映像的にも心理的にも鮮やかなコントラストがすばらしい。最終話では、ビル建設現場の足場からミキサー車のドラム内に転落した男が、ボートピープルとしての人生を一瞬のうちに回想する。ややあざとい技法だが、移民同士の心の結びつきと断絶を過去と現在の対比で綴った短編集の掉尾にふさわしい一篇である。