ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jonathan Franzen の “The Corrections”(2)

 ついに風邪をひいてしまった! たぶんコロナではなく(そう思いたい)、どうも孫からもらったものらしい。孫のほうはもうケロっとしているのだけど、ぼくはまだ頭が痛い。血圧のせいかもしれない。
 おかげで、"Middlesex" は足踏み状態。しかも振り返ってみると、中盤あたりから、だんだんつまらなくなってきた。I was born twice: as a baby girl, .... and then again, as a teenage boy, .... という魅力的な書き出しの then again 以下のほうに話が進みつつあるのだが、べつにどっちでもいいんだけど、という気がしなくもない。それは偏見だと自戒しつつ、眠い。
 表題作の落ち穂拾いを簡単に済ませておこう。これも前回の "The Amazing Adventures of Kavalier & Clay" と同様、ひと目見たとたん積ん読になってしまった大作。辞書なみにデカい。
 これは最初、パーキンソン病にかかった老人とその妻、子どもたちをめぐる family comedy のような要素があり、そしてその要素はいちおう最後まで維持されるのだけど、途中、たしか conventional family comedy という文言が出てきた。メモを取るのをうっかり怠ってしまい、正確な引用はできないのだが、conventional という形容詞だけははっきり憶えている。これを目にしたとき、ぼくはとっさに思った。ハハァ、この本はいまのところ conventional family comedy のようだけど、ほんとうは違うのだな。とすれば、どこがどう違うのだろう。
 それとタイトルの corrections。何をどう correct する話なのか。
 と、そんな観点から読み進み、レビューをでっち上げた次第である。参考にした箇所のひとつがここだ。Everyone's trying to correct their thoughts and improve their feelings and work on their relationships and parental skills instead of just getting married and raising children like they used to, is What Ted says. .... he and I don't really agree at all anymore on what's important in life.(p.356)
 こう語るのは Sylvia という女性で Ted の妻。ふたりとも端役なので中心人物との関係は省略するが、とにかくこのくだりに本書で起こるドタバタ悲喜劇の原因が示されているように思う。大きくいえば人生観や価値観、そこまで話を広げなくとも、ちょっとした考え方の違いによって対立が生まれ、それぞれ自分の考えを改めようとしたりしなかったり。その焦点が些細な問題であれば喜劇となり、厄介な問題であれば悲劇となる。こうしたプロセスが「デフォルメに近いかたちでコミカルに描かれる」のが本書ではなかろうか。
 そういえば、わが家でも似たような事件が、と思わずふきだしてしまったエピソードもいくつかある。上の老夫妻の娘が久しぶりに帰省した際、家のなかのガラクタ類をせっせと片づけたところ、あとで、え、あれも捨ててしまったの、と夫人が慨嘆する。ありふれた話だが、Franzen の手にかかると、けっこうおかしい。
 いかん、たいした分量を書いたわけでもないのに、もう目の前がぼうっとしてきた。おしまい。

(下は、最近届いたCD。美しいチェンバロだ) 

Harpsichord Concertos

Harpsichord Concertos

  • 発売日: 2008/07/07
  • メディア: CD