ロングリストの発表時から気になっていた Anne Enright の "The Gathering" を読了したので、さっそくアマゾンにレビューを投稿した。(その後、削除)

- 作者: Anne Enright
- 出版社/メーカー: Jonathan Cape Ltd
- 発売日: 2007/05/03
- メディア: ハードカバー
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The Gathering (Man Booker Prize)
- 作者: Anne Enright
- 出版社/メーカー: Grove Press, Black Cat
- 発売日: 2007/09/10
- メディア: ペーパーバック
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…これは期待外れ。過去の受賞作でいえば、ペネロピ・ライヴリーの『ムーン・タイガー』やマイケル・オンダーチェの『イギリス人の患者』、アルンダティ・ロイの『小さきものたちの神』などに近い作風だが、本書がそうした作品と決定的に異なるのは、コアになるべき物語があまりにも希薄な点である。早い話が、兄が自殺した動機や背景について、なぜもっと書きこまないのか不思議でならない。主人公がショックを受けて茫然としているのは分かるが、そのショックに説得力がないのは致命的なミスだ。兄が幼い頃に体験した性的事件にしても、全体の半分以上過ぎたあたりで紹介するのは、いくら何でも遅すぎるし、これまた説明不足。さらに前述の三作との違いを言えば、断片的に示されるそれぞれの場面が詩的なまでに昇華されていない。要は美しくもなければ、胸を打つわけでもない。つまり、あやふやなストーリーを背景に、曖昧な印象を羅列しているのが本書なのだ。これは、昨年のショートリストに残ったどの候補作よりも落ちる。今年のブッカー賞は低調という話がますます本当に思えてきた。
それを裏づけるかのように、アメリカのアマゾンのブログhttp://www.amazon.com/gp/blog/A287JD9GH3ZKFY/105-0084135-7441243?%5Fencoding=UTF8&cursor=1189182528.408&cursorType=beforeによれば、最新のオッズで一番人気は、ロイド・ジョーンズの『ミスター・ピップ』になっている。これはたしかに面白い作品だが、決して不満がないわけではない。まだ読んでいない候補作が三つあるので、そちらに期待することにしよう。